●建設業界は人手不足解消に向け、AI活用などによる業務改善や働き方改革が進んでいる
●建設業界の志望動機を書くときは[なぜ建設業界か][なぜその企業なのか]をしっかり深堀りする
建設業界は、地図に残る[モノづくり]に携わることができる社会貢献度の高い業界です。
就活生の中には[建設=職人]のイメージを持っている人もいると思いますが、一言に建設業界と言っても、企業群から業種、職種まで様々です。
ゼネコン、サブコン、マリコンなど複数の企業群があり、中でもスーパーゼネコンと呼ばれる大手5社は、知名度の高さと事業規模の大きさゆえに応募が集中しやすくなっていると言えるでしょう。
志望する企業の内定を獲得するためには、質の高い志望動機を書く必要があります。
建設業界の特長や業務内容を理解した上で、志望動機の例文を参考に書き方のコツを掴みましょう。
建設業界とは?
建設業界とは、一般住宅のような建物や道路など、様々な建築物の建設に携わる業界のことを指し、その中でも建築物によって2種類に分かれます。
住宅、ビル、学校、商業施設などの建物を建てる工事
●土木
道路、トンネル、橋梁、ダムなどのインフラ設備の新設・整備・復旧工事
地域のインフラ整備やメンテナンスなどをおこなうだけでなく、災害時においては最前線で地域社会の安心・安全の確保をおこなっており、国民の生活だけでなく社会経済も支えている重要な役割を担っています。
建設業界の動向
建設業界は、就業者の高齢化と若い世代の就業者が減少傾向にあり、今後さらに人手不足が深刻化すると言われています。
そこで建設業界は人手不足の解消や作業の効率化に向けて、DX化に注目しています。
『Digital Transformation』の略称で、経済産業省では下記のように定義されている。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
DX化を取り入れることで、調査や測量をドローンを用いておこなったり、3次元でデータを確認ができたりと、より早くより正確にデータを把握することが可能になると期待されているのです。
また、国内の少子高齢化に伴う人口減少によって建設業界の市場は縮小するとされています。
これに対し建設業界各社は、今後インフラ開発がおこなわれる見込みのある新興国への進出や、技術の継承・獲得を目的にM&Aを積極的におこなっています。
参照元:PRIDE~次世代へつなぐ 土木施工管理技士の新しい働き方/ドローンを活用した効率化
36協定の残業上限規制適用
2018年の労働基準法改正によって、36協定で定める時間外労働には罰則付き上限が設けられています。この罰則付き上限は、中小企業や一部業界に対して一定の猶予期間が与えられていましたが、2024年3月をもってその猶予期間が終わり、2024年4月からは建設業界にも36協定の残業上限規制が適用されます。
この規制が適用されることで、臨時的な事情を除いて、時間外労働の上限は[原則月45時間以内、年360時間以内]となり、違反すると企業が罰則を受けることになります。
長時間労働のイメージが強い建設業界ですが、厳しい制限が設けられることで業界全体の意識が変わり、働き方改革が進んでいくことが期待されています。
参照元:厚生労働省/はたらきかたススメ
建設業界の業種
建設業界は大きく[建築]と[土木]の2種類の業種に分かれています。
どの業種を選ぶべきか、それぞれの特徴をおさえておきましょう。
建築
建築の主な業務内容は、ビル・マンション・一戸建て住宅などを建てることです。具体的には設計・基礎・電機・配管など、様々な専門工事者を手配して工事全体のとりまとめをおこないます。
建築業界はオリンピックや万博開催に伴い非常に景気が良く、近年では仕事量が増加している業界と言われていますが、それを補える人材が足りていないという人手不足問題に直面しています。
そういった問題を解消するために、建築業界では人材確保に向け、雇用促進や待遇改善をおこなっています。
土木
土木分野の業務内容は、道路やトンネルなどのインフラ整備を目的とした公共建造物の工事です。おおまかにまとめると事前の調査、基本設計、本設計、着工の流れになります。
企業によっては設計や施工管理の担当として工事を進める場合もあれば、実際に作業員となって工事をおこなう場合もあります。
現在日本にあるインフラ設備の多くは1954年の高度経済成長期から一気に整備されましたが、インフラの耐用年数は40~50年と言われているため今後20年間で急速に老朽化することが懸念されています。
これらのインフラ設備や公共設備の再整備のため、建築業界同様に土木業界も需要が高まっていると言えます。
それにより近年の土木業界では、十分な人材を確保するために理系学生だけでなく文系の学生も採用しています。
建設業界の職種
職種によって業務内容も異なってくるため、「自分がやりたいことは何なのか」など、キャリア形成のイメージをある程度もって入社する必要があります。
選考時に「なぜその職種に就きたいのか」をしっかり伝えられるよう、それぞれの職種について見ていきましょう。
営業
営業には公共工事を受注するための[官庁営業]と、一般企業を対象とした[民間営業]の2つがあります。
お客様のニーズに応えるために社内で各部門と連携し、自社の技術を提案、受注に繋げることが営業の仕事です。
ただ工事を受注するだけでなく、建設現場と顧客を繋ぐ役割も果たしているため、施工を円滑に進める上でとても重要なポジションであると言えます。
設計
設計は主に図面を作る仕事で、大きく下記の3種類に分類されます。
建物全体のコンセプトや、外装・内装などのデザインに関する設計
●構造設計
建物の安全性を確保するための設計
●設備設計
電気や配管、インターネット設備など空間を快適にするための設計
主な建設物はビルやマンション、商業施設、住宅、公共施設、橋梁などで、依頼主との打ち合わせ、土地の調査、コンセプト構築、設計といった流れで進められます。
施工管理
施工管理は建物を作る過程全体を管理する仕事で、大きく分けると[建築][土木][設備]の3つに分類されます。
具体的には工事現場の現場監督など、職人さんへの指示出しや、進捗管理などをする人のことを指し、主に下記の4つの業務をおこないます。
作業員や現場の近隣環境の安全を守る仕事
●品質管理
成果物の品質を管理する仕事
●工程管理
成果物完成までの工程を管理する仕事
●原価管理
人件費・材料費などの経費を計算し、予算内に抑える仕事
各工事現場の責任者として現場を率いる場合には[施工管理技士]の資格取得が必要です。
参照元:ネオコンストラクション/施工管理の仕事内容とは?待遇・やりがい、向いている人について解説
技術
技術には、現場で実際に工事をおこなう[職人]と、工事に必要な資材や新しい技術の提案・開発をおこなう[技術開発]の2種類があります。
人手不足が進んでいる建設業界にAIやロボットなどを導入して工事を効率化させるための研究・開発は、今後需要が高まっていくと言われています。
事務
事務には、会社運営のサポートをおこなう[総務][経理]と、会社事業に携わる人のサポートをおこなう[営業事務][現場事務]があります。
建設業界は工事に関する契約書などの書類が多いため、営業職や現場管理職の担当者に代わり事務処理をおこない、担当者が集中して業務をおこなえるよう環境を整える役割を果たしています。
建設業界で評価される志望動機を作る3つのポイント
ここでは建設業界の志望動機を書く際に意識して欲しいポイントを3つ紹介します。
これから志望動機を作成するという人は、以下のポイントを参考に作成してみてください。
志望動機に必要な要素を把握する
志望動機を作成する際は「なぜ建設業界か」「なぜその企業なのか」をしっかりと深掘りしましょう。
「なぜ建設業界なのか」については、数ある業界の中でもなぜ建設業界を選んだのかについてしっかりとした理由を準備しておく必要があります。
建設業界は人々の暮らしや生活に密接に関わる仕事であるため「世の中の安心・安全を自分の手で作りたい」などといった建設業界ならではの理由を入れましょう。
また建設業界の中でも建築や土木など、業種によって取り扱う案件が異なります。
例えば、建築では、マンションや一戸建て住宅などの建築物の設計から建築までの様々な業務に携わるため、ただ建てるだけでなくお客様の人生に深く関わることになります。
自分は建設業界の中でも特を成し遂げたいのかを明確にするためにも、業種や職種ごとの仕事内容を必ず把握しておくようにしましょう。
「なぜその企業なのか」については、企業によって作っている建築物や構造物が異なるため、まずはその企業の特徴やその企業が強みとしている建物の構造などを調べます。
それが終わったら競合と比較してみてください。そうすれば自ずと各社ごとの特徴が明確になるはずです。
建設業界の求める人物像を把握する
建設業界の仕事は一人で完結できるものではなく、たくさんの人と関わりながら仕事を進めていく必要があります。
そのため、コミュニケーション能力はもちろんですが、工事を効率よく進めるために工程や進捗、安全などを責任もって管理するためのリーダーシップも必要です。
また、工事現場は常に危険と隣合わせであるため、トラブルを未然に防ぐ先読み能力も重要でしょう。
職種にもよりますが、上記に加えて自分自身が住み手の立場になって考え、お客様のニーズに沿ったものを設計できる想像力なども求められる素養であると言えます。
志望動機のフレームワークを知る
情報収集や自己分析を基に、伝えることが決まればあとは書くだけです。必ずしもオリジナルの構成にする必要はありません。
シンプルでわかりやすい文章構成が、相手を意識した書き方であり、読んでもらうコツです。
文章力に課題がある人は第三者にチェックしてもらい、「て・に・を・は」や、接続語、「です・ます」調など細部まで整えましょう。
(1)志望動機を一言で
(2)具体的に言うと
(3)理由(過去の経験と業界・その会社の関連性)
(4)入社後にどうなりたいか
志望動機の書き方、考え方を詳しく知りたい人は下記をご覧ください。
建設業界の志望動機の例文
実際に選考を通過したESの志望動機の例文を大手ゼネコン及び職種別に紹介します。
クオリティと書き方を学び、自身の志望動機に落とし込んでみましょう。
大手ゼネコン(施工管理職・事務職・総合職)
大林組(施工管理)
以上のことを実践し、貴社に入社後、周りからの信頼が厚い現場所長になりたいです。
→入社後にしたいことに対して自分をどう成長させていくか、職種に求められる能力や考え方を含めて具体的に述べることができています。
鹿島建設(事務)
またゼネコンの中で特に貴社を志望する理由は2つある。1つ目は超高層ビルやロボット技術の開発など、業界に先駆けて挑戦し続ける姿に惹かれたからだ。積極的に取り組む事でやりがいを感じてきた私にとって、貴社の挑戦心の高さに大変魅力を感じた。2つ目は貴社の社員の熱血さと自信の強さに惹かれたからだ。説明会や3度のインターン、現場見学会、OB訪問、リクルーター面談を通じて、貴社の社員から、新しいことに挑戦し続けるという熱血さと、確固たる実績から来る自信の強さを感じ、共に働きたいと思った。
以上の理由から貴社を強く志望する。
→なぜその業界が良いのか、その中でもなぜ個社が良いのかが自分の過去の経験を通じて明確に書かれています。
参照元:unistyle/選考通過者本選考ES(鹿島建設22卒)
清水建設(総合職)
私は大学時代塾講師のアルバイトを行なっており、その際多くの受験生の強い支えになりたくさんの感謝をされた経験から、人生に寄り添い、人の支えになれる職業につきたいと思い始めた。その中で貴社は「モノづくり」を通じて特定の人だけでなく、不特定多数の人生に寄り添うことができるので魅力的だ。
また「誠実・総合力・技術力」を特徴とし、中小企業とも積極的に関わっている貴社で働くことが出来れば、より多くの現場に携わることができ、多くの人を支えていくインフラを創り上げることが可能となると考えている。
そのため私はそんな魅力溢れる貴社で働き、コーポレートメッセージである「子どもたちに誇れるしごとを」の実現に向けて精一杯努力をしていき、世界中を笑顔にしたいと考えている。
→なぜ建設業界を志望しているのか、過去の経験と個社の特徴を踏まえて書かれているため具体的な志望動機になっています。
参照元:unistyle/選考通過者本選考ES(清水建設21卒)
営業職
2点目は御社の家に魅力を感じたからである。数ある住宅メーカーの中でも外観や内装において木の素材を心地よく織り交ぜ、ビックフレーム工法によって間取りの自由度が高い御社の家を将来的に自分で建てたいと思い、また自分が欲しいものであれば自信を持ってお客様に営業できると思った。
→始めに『〇点ある』と記載していることで、読み手が理解しやすい構造になっています。
自分の経験とやりがい、企業の特徴を踏まえて将来何をしたいか、が具体的に書かれているため、説得力がある回答ができています。「自分が欲しいものであれば自信を持ってお客様に営業できる」という視点も企業と適合しているということを強調できているポイントと言えるでしょう。
参照元:unistyle/内定者本選考ES(住友林業23卒)
設計職
私の設計理念は『社会のコンテクストから「ひと」と「モノ」の関わり方をデザインし、「まち」と「ひと」をつなぐ建築をつくる』です。貴社は、戦後の都市部における人口集中という社会課題に取り組むべく事業を始動させ、以降一貫して社会課題解決へと挑戦してきた実績があります。
渋谷や東急沿線をはじめとする開発の実績、都市型ゼネコンとして高い技術力とノウハウを持つ貴社で、私の設計理念を活かし、人々に寄り添ったまちづくりを行い、社会課題解決へ挑戦したいです。
→なぜその企業を志望しているのか、自分の設計理念と個社の特徴を踏まえて具体的に回答できています。
参照元:unistyle/選考通過者本選考ES(東急建設24卒)
技術職
→自分の経験を丁寧に説明した上で、企業の取り組みや姿勢に対してどう共感したかが伝えられている回答になっています。
参照元:unistyle/内定者本選考ES(住友林業20卒)
上記例文の他にも就活支援サイトunistyleでは選考通過者のESを7万件以上掲載しています。 下記画像からサイトに移動できるので、是非ES作成の参考にしてください。
建設業界の志望動機のNG例文
OK例文だけでなく、NG例文を見ておくことも大切です。
自分の志望動機と見比べて不足している部分があれば追加し、内定獲得に向けて志望動機をブラッシュアップしていきましょう。
1点目は「世の中に残るものを通して、人々の生活を支え、社会に貢献したい」というやりたい仕事が貴社で実現できると考えたためです。高い技術力を持つ貴社であれば実現できると考えました。
2点目は貴社の社風です。説明会に参加した時に人を大切にする風土があると知り、是非貴社で働きたいと考えました。
全体的に内容が抽象的で信憑性が低く、「その仕事うちの会社じゃなくてもできるよ」と思われてしまう回答です。
①「なぜその仕事をしたいのか」のきっかけとなったエピソードが書かれていると良いでしょう。
②「高い技術力を持つ」の部分は、『何の技術のどういった特徴』なのかを書くようにすると企業特徴が理解できていることがアピールできます。
③ただ「社風を知って良いなと感じた」と伝えるのではなく、「その社風を知って何を感じたか」を具体的に書きましょう。自分の大切にしている価値観などをあわせて書くと信憑性が高まります。
建設業界の志望動機で注意が必要なアピール内容
建設業界を志望している就活生の中で”モノづくりに関わる仕事がしたい”というアピールをしているという人もいると思います。
もちろん、そのアピール自体が悪いわけではありません。
しかし、世の中にはモノづくりに関わる仕事はたくさん存在するため、そのアピールでは建設業界でなくてはならない理由にはなりにくいです。
志望動機はあなたの熱意を伝える場面であるため、他の業界でも通じる内容をアピールしてしまうと「うちの会社でなくても良いのでは…?」と企業の採用担当に思われてしまう可能性があります。
“モノづくりがしたい”という内容をアピールするのであれば、モノづくりの中でも具体的にどんなものが作りたいのか、モノづくりを通じて何を成し遂げたいのかを交えて伝えることで、あなたの熱意をアピールするようにしましょう。
まとめ
本記事では建設業界の動向や仕事内容から、建設業界で評価される志望動機の書き方や例文を紹介してきました。
建設業界の中でも大手ゼネコンは応募が集中しやすいため、志望動機で他の就活生との差別化を図ることが内定獲得の第一歩となります。
そのため、志望動機を作成する際は、本記事で紹介した3つのポイントを念頭において作成してみてください。
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- 「建設業界の選考で評価される志望動機ってどう書けば良いの…?」
- 「建設業界ならではの対策ってあるのかな…?」
- 「建設業界の企業や職種について詳しく知りたい!」
このように就活に関する悩みや疑問は人それぞれでしょう。
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