私たちの身近に、当たり前にあるコンビニ。
私たちが接している店舗の業務はイメージできると思いますが、社員の業務はどのようなものなのか、各社の経営施策や市場動向はどうなっているのか、詳しく語れる方はそれほど多くないのでないでしょうか。
本記事では、コンビニ業界の本部側の話を中心に、コンビニ業界の最近の動向と、職種、志望動機の書き方について記載しています。
コンビニ業界の動向
ここではコンビニ業界の動向と、大手3社の最近のトピックについて述べていきます。
「巣篭もり需要」への対応
最近のコンビニ業界では「巣篭もり需要」への対応が求められています。
というのも新型コロナウイルスに端を発したテレワークの普及でオフィス街の店舗が苦戦しており、コンビニ業界全体の売上が落ち込んでいるからです。
各社は、今後も続くことが考えられる「巣篭もり需要」に対応した商品展開や店内レイアウトの変更などを戦略的に行うことで、売上の低迷を防ごうとしています。
例えば、ローソンでは家庭でも外食気分が味わえるよう外食企業とコラボをした商品を、ファミリーマートでは内食への需要を満たすために冷凍のカット野菜の拡充などを行っていく予定です。
セブンイレブンにいたっては、冷凍食品やリキュール類など「巣篭もり需要」に対応した商品を戦略的に店頭に並べる施策を早期に行ったことで、売上を前年と同水準に戻しつつあります。
また今後もコロナで変化をした消費者行動に対応した各社の施策が注目されます。
地域に合わせた経営戦略
現在、コンビニ業界では一店舗あたりの売上(利益率)を最大化する戦略が必要だと考えられています。
これまで、コンビニ業界のビジネスモデルは店舗を増やすことで収益を伸ばす積み上げ式の売上施策を中心としてきました。
なぜならコンビニ加盟店はフランチャイズ契約のため、従業員の人件費と食品の廃棄によるコストの大半はオーナーが負担をします。
そのため、人手不足で人件費が高騰しても、本部は出店を増やせば、簡単に増収増益につなげることができたからです。
ただ、近年、出店増による競争激化で売上の低迷に苦しむ一部オーナーの“反乱”や、日本の人口が減少していくことを考えると、規模の拡大によって成長を目指す戦略には限界があると考えられています。
そのための施策の一つが「地域密着」型の経営戦略と言われており、具体的には、その地域ごとの好みに合わせた独自の商品の開発や地域ごとの「イベントプロジェクト」の計画など、地域のニーズを汲み取った店舗作りを行うことです。
その一例がエリアフランチャイズである沖縄ファミリーマートの成功です。
沖縄ファミマの従業員の9割が沖縄で産まれ育った地元民で、地元民ならではの意見を取り入れた施策を行ったことで売上を伸ばしています。
例えば、ゴーヤーチャンプル弁当やランチョンミートのおむすびのような地域に密着した商品を開発したり、沖縄に縁のある歌手とライブを企画し、店舗で一定額以上の商品を購入するとそのチケットの抽選に参加できるなどのキャンペーンを行ったことです。
コンビニ業界についてもっと詳しく知りたい方は以下の記事を御覧ください。
コンビニ業界大手3社の動向
❏セブンイレブン:「海外戦略の強化」
2020年8月に米国第3位のコンビニ「スピードウェイ」を2.2兆円で買収することを決め、セブンイレブンは今後、海外戦略を強化することを明言しています。
理由としては、日本のコンビニ業界は先に述べたように「飽和状態」にあるのに対し、米国は先進国としては珍しく、今後、数十年にわたって人口の増加が見込める成長市場とされているからです。
セブンイレブンが米国でどのように利益をあげていくか、今後の動向が注目されます。
❏ファミリーマート:商社との一体化
伊藤忠商事がファミリーマートに対して実施した株式公開買い付け(TOB)が成立しました。ファミマは伊藤忠の完全子会社となり、2020年11月に上場が廃止されます。
伊藤忠はこの買収によって新型コロナウイルス感染拡大後、さらに業績悪化をしているファミマのサプライチェーンから売り場作り、顧客管理、デジタル化など根本的な事業の見直しに介入していくと言われています。
❏ローソン:他業種との提携
ローソンは他業種との提携を積極的に行い、自社サービスを高める施策を行っています。
コロナで長引く「巣篭もり需要」に対して、日本のコンビニで初めて導入した「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の対象店舗数を増やし、約300品目の商品配達を行っています。
同じくコロナで需要が伸びた生活用品に対して、商品力に定評のある「良品計画」と提携し、今後日用品などのPB(プライベートブランド)商品を共同開発していく予定です。
動向を理解するだけでなく、接客をメインに行いたいのか、マネジメントに注力したいのか、自分がどのようなキャリアを歩みたいのかをきちんと整理し理解しておきましょう。
コンビニ業界の主要職種
だいたいの企業において新卒で入社をすると、まずは店舗に配属され、店社員、店長、エリアマネージャーを経験した後に、商品開発・店舗開発・海外事業などの本社勤務に配属されるケースが多いようです。
ここでは店員としてお店で働く以外にどのような業務があるのか、コンビニ業界の職種を説明します。
店長
接客の他、人やお金、商品の管理を行います。また、商品棚の工夫やPOPの作成を行うのも店長の仕事です。
例えば、ビジネスホテルが近隣にある店舗の場合、観光客やホテルに宿泊される顧客が利用するので、日用品の棚を増やすなどの施策を行います。
SV(スーパーバイザー)/OFC(オペレーションフィールドカウンセラー)
店舗と企業の橋渡しとなる業務です。複数の店舗や、オーナーと会社の窓口となります。
オーナーと店舗の目標利益を決め、それを達成するために一緒に考えて行動をしていくため、オーナーや店員とのコミュニケーションが大切で、困ったら相談できるような存在になる必要があります。
SNSなどを利用して、流行、好まれる商品の傾向の情報を集めたり、その地域に根ざしたお店と売り場を作っていく必要があるため、コンビニ経営においてとても重要なポジションになります。
商品企画
新商品の開発・企画を行う業務です。
関西と関東など地域ごとのチームに分かれて、それぞれの地域にあった商品を開発することもあります。
本社の商品開発のメンバーは開発をした商品が店頭に並ぶまでの全ての工程に関わるため、製造メーカーや原料メーカー、プロモーションを行う販促チームなど、多くの人と打ち合わせを行います。
そのため発想力だけでなく、コミュニケーション能力や、調整力も必要な仕事です。
店舗開発
店舗開発の業務は収益が見込める出店先や移転先を探して、土地所有者の方と交渉して用地を取得し、その店を運営する加盟者を探すことからはじまります。
土地の取得から新店舗の施工、加盟候補者の募集から面談、契約などを行うので多くの人と関わりながら仕事を行います。
例えば、出店エリアの営業所とは、開店後を見据えた打合わせを重ね、加盟者の募集については、本社の開発推進担当と連携しながら行います。
新規出店や移転に関するあらゆる調整を行うのが開発担当の役割なので、必然的に関係者は多く、関係者の利害や考えを一つにまとめる力が必要です。
海外事業管理部
その国に駐在することもありますし、日本にいながら業務を行うこともあります。
各国の事業を行っている会社の業績管理や投融資管理、予実管理、駐在員管理、また、本部運営業務では、本部予算策定・業績管理、社内会議体への上程や経営報告、商標管理、会議体事務局、庶務業務、社内調整などを行います。
店舗を開発するだけでなく、物流、オフィス、社内組織などを他国でゼロから作る必要もあります。
志望動機の作り方のポイント
コンビニ業界の志望動機を作成するうえでポイントになるのは、「なぜコンビニ業界で社員として働きたいのか。(アルバイト業務に携わる機会を得ることは容易である)」「なぜ、多くの同業他社がある中で、その企業で働きたいのか」です。
同業他社の企業HPを確認をし、志望企業の特徴をしっかり洗い出したうえでESの作成に臨みましょう。
なぜコンビニ業界か
他の小売と比べて、どう違うのか、コンビニ業界に務める社員の特徴を自分なりにあげてみましょう。
例えば、ドラッグストアやスーパーと比べてどうなのか、コンビニ業界の本社業務のどのような部分に魅力を感じるのか、自分なりに書き出してみることが大切です。
調べるうちに商品企画や店舗開発など最終的に手がけてみたい業務が見つかるかもしれませんが、新卒として入社した場合、どの企業においても店舗配属から店長、SV(スーパーバイザー)もしくはOFC(オペレーションフィールドカウンセラー)というキャリアを経験することになるようです。
そのため、店長になった際に何をしたいか、SVやOFCになった場合に何をしたいかもイメージしておく必要があります。
なぜその企業か
各社の特色について自分なりの見解を出し、それを面接で語ることができるレベルにしておきましょう。
企業HPを確認するなどネットで情報収集するのも良いですが、コンビニは身近にあるものです。
実際に足を運んで、お店の作りや、商品の感想を面接で問われた際、他店舗と比べてどうなのか、店舗のどこが魅力的で志望企業に興味をもったのか、具体的に言えるようにしましょう。
また各コンビニごとの特色、今どのような分野に力を入れているのかを、自分なりに把握すると良いです。
ローソンのこの店舗は棚の作り方が魅力的である、お弁当はセブンイレブンのものが彩も良くて選ぶのが楽しい、ミニストップのデザートのクオリティは大手3社と比べても高いように思うが、どういう部分でそう思うのかなど、など消費者目線の感想をきちんと持つことも大切です。
なぜ自分が向いているのか
コンビニ業界の仕事を把握し、自身の性格と照らし合わせて、適性があるかどうか確認しましょう。
また実際に小売店でのアルバイトをしたことがある方は、その経験を語ることも良いと思いますが、小売店のアルバイトと社員の違いを調べ、そのうえで社員になりたいと思っているという話をする必要があります。
社員は店舗業務だけでなく、人員管理、売上管理、販売予測、マーケティングのような業務も行います。また棚づくりも主導して行うようになります。
そのような小売店の社員のならではの業務に自分がどう適しているのかを伝えられると志望動機の説得力は増すでしょう。
志望動機の書き方
情報収集や自己分析を基に、伝えることが決まれば、あとは書くだけです。必ずしもオリジナルの構成にする必要はありません。
シンプルでわかりやすい文章構成が、相手を意識した書き方であり、読んでもらうコツです。
文章力に課題がある人は第三者にチェックしてもらうことで、「て・に・を・は」、接続語、「です・ます」調など細部まで整えましょう。
(1)志望動機をひと言で
(2)具体的に言うと
(3)理由(過去の経験と業界・その会社の関連性)
(4)入社後にどうなりたいか
志望動機の書き方、考え方を詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
コンビニ業界3社の志望動機の例文
コンビニ業界の中でも人気の高い企業3社の選考通過ESの志望動機を紹介します。
セブンイレブンの志望動機の例文
2.品質を保ちつつ新たな挑戦をしていく姿勢。常に高品質な新商品が発売されている貴社の店舗は「真の競争相手は絶えず変化する顧客のニーズである」という言葉を掲げ挑戦し続けている貴社の姿勢を体現していると感じます。また、私は貴社の商品を製造する工場で働いた際に、機械任せではなく商品に人の手が加わっていることを知りました。そこから貴社には挑戦の土台となる商品の質への強いこだわりがあると感じました。
→1については、「学園祭実行委員会での経験から、人や組織に貢献し〜」との記載がありますが、「学園祭実行委員」のどのような経験から「人や組織に貢献し自分の存在価値を実感」したのかを具体的に説明した方が説得力がでると思います。
一方、2については、「品質を保ちつつ新たな挑戦をしていく姿勢」に魅力を感じることが、実際にセブンイレブンの工場で働き、機械任せではなく商品に人の手が加わっていることを知れたことに理由がある、と具体例があげられており、説得力もあるため、面接官の目に止まりやすい志望動機になっていると思います。
セブンイレブンの志望動機の例文
私は、現在アルバイトで個別塾の講師をしているのですが、勉強に対するモチベーションの低い中学3年生への指導方針について大変悩んでいました。そこで私は、本人と真剣に向き合い、彼自身の性格を熟知して理解を深めることがモチベーション向上の糸口になるのではないかと考えました。具体的には、授業前10分間を進路相談の時間とし、高校に入ってから何をしたいのか、また進学後それは実現できるのか等を生徒と共に考え、モチベーションを上げていきました。その結果、彼は、箱根駅伝に出たいという夢が見つかり、陸上が強い高校に行きたいと強く志望し、合格に導くことができました。
このように、「人」の人生に深く関わり、それぞれの店舗の課題や特徴に合わせた経営コンサルティングがしたいと考えOFCを強く志望致しました。
→OFCを経験した後のキャリアついても触れられていると、良いと思います。
OFCを経験した後に、その経験を活かしてこのような業務をやってみたいという話につなげられると面接の場での志望動機の幅が広がると思います。
また、なぜセブンイレブンなのか、という理由がこの「OFCを選ぶ理由」内では述べられていませんが、ES内に「セブンについて魅力に感じたこと(400文字)」という設問があり、そこで記載ができているので問題ありません。
もし、このような設問がない場合には「なぜ、セブンイレブンのOFCを経験したいのか」という点を含めて記載ができると良いと思います。
ファミリーマートの志望動機の例文
→なぜ、コンビニの無限の可能性に魅力を感じたのか、なぜその中でもファミリーマートなのか、という理由が弱いです。
少ない字数の中、志望理由に具体性をもたせることは容易ではないですが、なぜそう思ったのか、という部分を意識して書くだけで、より良い志望動機になると思います。
例えば、「地域に寄り添い〜」と思った理由が、普段の生活や自分の経験のどこにあるのか、掘り下げて記載するだけでも具体性が増します。
「また私は将来、中国語圏で〜」についても、なぜ中国語圏で働きたいと思うのかを旅行に行ったことで思ったのか、中国語を習得したことで思ったのかを述べられると良いと思います。
まとめ
コンビニ大手3社の採用HPを閲覧すると「海外進出」「ダイバーシティ」「IoT」などの言葉が並んでおり、私たちが普段見ているコンビニからは想像できない様々な施策や業務があり、また日々、新しいことに挑戦をしているのだということが分かります。
コンビニ社員は店舗数も、取り扱う商品の種類も多いことから様々な人と関わるため、コミュニケーション能力が求められますし、
また商品の回転がはやいため、流行に敏感であったり、時期にあった消費者ニーズを捉えるなど、マーケティングの視点も必要になります。
決して楽な仕事ではありませんが、小売業を目指す人にとって、コンビニ業界で社員を経験することはいろいろな角度から店舗経営を見る目を養うことに通じるのではないでしょうか。
ぜひ、本記事からコンビニ社員となることへの面白みや、コンビニ業界の特徴を把握して頂き、ご自身が今後築いていきたいキャリアや業務内容にマッチをしているのか確認したうえで、自分なりの志望動機の作成に役立てて頂けたらと思います。
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- 「コンビニ業界ならではの志望動機とはどういう内容?」
- 「コンビニ業界で評価される志望動機を書くにはどうしたらいい…?」
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