今回は、松田電機工業所の松田取締役にお話を伺いました。
同社は自動車部品製造技術と「創意と改善」のモットーを携えて、顧客のニーズの追求と新規分野への進出に奮闘する会社です。
松田電機工業所ってどんな会社?
松田電機工業所の4P
松田電機工業所は、愛知県小牧市で自動車用のスイッチを製造している会社です。
松田電機工業所について、会社の魅力を4つのP(理念・職業・人事・組織)でまとめてみました。
実際にどんなことをやっているの?
松田電機工業所では自動車に使われるスイッチを中心に製造しています。製造されているものは、ハンドルやシート周りについているスイッチ、フロントの空調スイッチに至るまで多種多様です。
松田電機工業所では設計から製造、品質保証まですべて自社の内部で行っています。顧客オリジナルのオーダーメイドも請け負っていることが特徴です。
今回はオーダーメイドのスイッチが出来上がるまでの工程を簡単に説明していきます。
まず3Dモデリングにて設計を行い、治工具・金型製作が始まります。すべて松田電機工業所産です。
次に部品を製造していきます。成形や塗装、レーザー加工を経て、スイッチが組み立てられていきます。
最後に計測やデータ処理によって品質保証を行い製品出荷となります。
ここで作られたスイッチは取引先でさらに加工され、最終的にトヨタ自動車やダイハツ工業といった自動車メーカーへ納入されていきます。
現在は「IM開発」に力を注いでいます。IMとは、Innovation Movementの略で、社内に新たな部署を設け、システム・データ解析やIoT、自働化、ロボティクスといった先端技術の研究開発を手掛けています。
次の項目からは、松田電機工業所の松田取締役との対談の内容をお伝えします。
松田取締役の学生時代や現在に至るまでの経緯、理想の人材、学生へのアドバイスをもらいました!
【インタビュー】育ての親はキャリア
ーはじめまして。本日は貴重なお時間を頂き誠にありがとうございます。これからインタビュー始めていきたいので、よろしくお願いします!
松田取締役:こちらこそよろしくお願いします。
ーまず、松田取締役の学生時代についてお伺いしたいです。
松田取締役:大学ではあまり勉強をせず、遊び惚けていた不良学生でした。
高校では比較的、一生懸命勉強していたのですが、大学ではあまり学校に行かなかったんです。
2011年に大学卒業後、経営理念のしっかりした出光興産に入社しました。
父親から「自分の好きな企業を選んで受ければよい。その業種の常識は他から見ると非常識に感じることもあるから、違う業種を見ておいた方が家業に戻った時に比較が出来るぞ。」と言われていました。
リーマンショック後の氷河期真っただ中の時期に、社長の息子ということを隠して就活していました。
他業種から自動車業界を考察できる・分析できるというのは今でも私の強みの1つです。
23歳の頃、タイに工場を作るから戻って来いという話を受けて、出光興産を辞めてタイに向かいました。タイに行くまでTOEIC300点台だった私は現地人とのコミュニケーション面で困難が多かったです。1年半~2年の滞在で、工場設立からオペレーションまですべてを勉強しました。その経験が今も活きています。
学生時代遊んでいた僕にとって、キャリアが自分を育ててくれました。
【インタビュー】理想の社員ー自分に素直になることー
ー会社に求める人物像、一緒に働いて欲しい・成長して欲しい方についてどのような考えをお持ちでしょうか。
松田取締役:2つあります。
まずは素直なことですね。とはいえ、上司が言ったことを「はいはい」と聞くことではありません。嘘をつかず自分の考えをもって真摯に受け止めることができることです。仕事をする上でとても重要なことだと思っています。
もう1つは常に思考し続けられることです。言われたことをなにも考えずにやるだけでは社会人として成長していかないと思っています。
会社ではうまくいくことだけでなく、考えに合わないことや失敗してしまうことといった問題がたくさん起きます。その都度上司に自分で考えもせずに「どうすれば良いですか」と聞いていたら、個人としての成長はしていかないし、やはり組織としても弱くなってしまうと思います。
例えば地方支店にて災害など不測の事態が発生したとき、本社の幹部たちは実状をよく知る現場の判断を信頼します。こういった場面に直面した時、すぐにきめ細やかな指示を出すことができるのは、常日頃から考えるクセができている人たちです。
出光興産では日常的に上司になにかを相談しに行くと「お前はどう思うんだ?」と自分の考えを聞かれていました。今思うと考えるクセづけでした。家業に戻った今、そのような大切な文化を移植しようととしています。
考えるのも訓練です。毎日毎日訓練すれば精度も上がります。たとえ間違ったことをやってしまったとしても、考え抜いて出した結果であればそれは良い学びであったと言えます。
考えずに出した結果は良いものとは思えません。何回も思考を繰り返していれば、成功頻度も増えていきます。時として、周りとは異なる尖ったアウトプットも歓迎すべきです。
ー自分の考えに素直になるべきとおっしゃられていましたが、転職など社員のキャリアデザインについてはどのようにお考えでしょうか。
松田取締役:実はそこが難しいところです。我々製造業においては、転職して欲しくないというのが本音です。
日本では海外のように転職でキャリアアップしていく文化がまだまだ成熟しない現状があります。
特に製造業として働くうえでは、長年勤めてもらうことで蓄積する暗黙知の面がとても重要です。これは日本の製造業が世界を圧巻した一要因であったと思いますが、最近の世間のキャリア形成と乖離し始めているとも感じています。
我々製造業は古臭いイメージがありますが、これからは面白い仕事を提供し、社員の成長を喜び、社員に働きやすいと思ってもらえる文化をいかに創っていくかが、カギになってくると思っています。
【インタビュー】これから社会に向かう学生へ
ー最後に学生へのメッセージをお伺いしても良いですか。
松田取締役:学生さんに、在学中は「友達と深い仲になっておいたほうがよい」と伝えたいです。
社会人になると仕事と関係のない友達が作りにくくなって、仕事が絡む話がしにくくなります。
加えて、社会ではどうしても理不尽なことが襲い掛かってきます。このストレスのはけ口をつくり、心身共に健康で働くことが本当に大切なんです。友達でも恋人でも何でもいいのです。
もちろん人数が多ければ良いという訳ではなく、人数が少なくともしっかりとした友達との信頼関係を築いておいてください。仲良くなって、土日ご飯行こうなんて凄い楽しいですからね。
社会人1年目とか悩みっぱなしだと思います。このときにストレスを溜めないことは本当に重要です。
学生時代の友達は何年たっても友達で人生の様々な面で助け合うことができます。
学生の間に悩みを話し合える友人を作り、社会に出た後もお互いを支えあっていってほしいです。気遣うことなく話ができる関係は仕事だけでなく、人生そのものを豊かにしてくれると思っています。
自動車部品業界とは?
業界の構造と仕事内容
自動車部品業界とは、自動車の部品を作るメーカーの形成する市場および業界を指します。
自動車は日本を代表する基幹産業で、国際競争力も高く、IT化により求められる技術や、価値が変化している業界です。
一口に自動車部品と言ってもその数は多く、エンジン、変速機、サスペンション、シート、ブレーキ、ハンドル、ECU(エンジンコントロールユニット)、熱交換器、ワイヤー、電子制御システム、エアバッグ、EPS(電動パワーステアリング)など多岐にわたります。
日本国内ではトヨタ、日産、ホンダといった大手自動車メーカーの系列企業が中心に、海外企業や独立系の企業などがあります。メーカー系列の自動車部品メーカーが多数存在することから、自動車産業の業績の影響を多大に受けるのが特徴です。
また、従来は自動車完成車メーカーの系列部品メーカーであれば流動性もなく安泰であったものが、自動車業界の再編を受けて、系列取引にとらわれない枠組みとなった事から、コスト、品質、技術力の面での高い技術力と競争力を求められています。
業界の市場と動向
東京商工『リサーチの調査データ』によると、自動車部品関連メーカー4,391社の2016年10月期~2017年9月期の売上高合計は「33兆2,021億8,500万円(前期比1.5%増)」、当期利益合計は「1兆1,260億3,300万円(同6.1%減)」と増収減益となっています。減益要素としては為替変動、原材料の高騰、その他人件費上昇や投資負担といったものが要因となっています。
世界的な自動車需要の恩恵を受け、自動車部品業界も拡大路線が取られてきましたが、サブプライムローン問題やリーマンショックによる世界不況の影響を受け、自動車販売台数も大幅に落ち込みました。その影響が自動車部品業界にも影を落とし、2009年には大幅減となってしまいました。
その後海外市場を筆頭に自動車業界の売上が著しく伸び、それと共に自動車部品業界も市場規模が拡大しています。
特に東南アジア市場が新たな拠点として需要拡大が期待されるエリアとなっています。
今後はリコール件数削減のために、自動車部品業界としての早期発見、品質管理・情報管理の徹底で業績を落とさないこと、またIT化に伴う、品質技術力を担保することが課題です。
▶参考記事
・業界動向サーチ 自動車部品業界
・マイナビ2022 自動車・輸送用機器(自動車・自動車部品)の業界地図
・フォーバル事業継承 自動車部品製造業界の市場動向
最後にー松田電機工業所のインタビューを通してー
社員一人一人が自分に素直に働ける職場作りを目指す松田取締役の考えから、変革の激しい自動車業界において、社員が作り上げる組織や会社も凝り固まってはいけないという強い意志を感じました。
逆風激しい社会人生活において、「学生時代の友人を大切にすること」の重要さを訴える取締役の言葉はとても印象的でした。コロナ禍にある現在、友達の存在は学生である私たちにとってもかけがえのないものとなっています。就活に関しても、深い絆で結ばれた仲間たちと乗り越えていきましょう。
改めて、松田取締役、貴重なお時間をありがとうございました。