●映画業界の求める人物像は、映画が好きといった情熱があることに加えて[行動力がある][向上心がある][コミュニケーション能力が高い]のいずれかを満たす人である。
●映画業界への就職を目指す就活生は、映画業界ならではの面接対策やインターンに参加するなどして事前準備をすると良い
華やかなイメージのある映画業界に憧れを抱き、就職を希望する就活生は少なくないでしょう。しかし映画業界は、採用枠が少ない企業が多く、難易度が高い業界です。
そのため以下のような疑問のある就活生もいるでしょう。
- 「映画業界にはどういう企業・職種がある?」
- 「映画業界ではどういう人が採用されるんだろう?」
- 「映画業界での就職を希望する就活生がすべき選考対策ってあるのかな?」
本記事では映画業界の仕組み・業界動向・求める人物像・選考対策ですべきことなどについてわかりやすく解説していきます。
映画業界での就職を希望する就活生は、是非本記事をあなたの業界研究にお役立てください。
映画業界とは?
映画業界とは、映画を企画・製作し映画館で上映するまでに必要な一連の流れに携わる人々や会社が属する業界です。
映画は映画館で上映されたら終わりではなく、[WOWOW][Netflix]などを運営する動画配信会社に買い取られ、各サービスで配信するといった二次活用もされています。
この二次活用の一連の流れにも映画業界が関わっています。
映画業界の仕組みと事業内容
映画業界は[映画制作会社][映画配給会社][映画館運営会社][動画配信会社]の4種類に分類されます。それぞれの事業の特徴・主な職種・代表的な企業を紹介しているので確認してみてください。
映画制作会社
映画制作会社は、新作映画の企画立案や脚本作成、出演者への交渉、撮影、編集などをおこないます。
映画制作会社で働く際は、ヒット作品を生み出すためにも「時代や世の中が求めている作品は何か」を読み取るトレンド認知力が求められます。
映画制作会社の代表的な企業としては、[東映][東宝][KADOKAWA]が挙げられます。
映画配給会社
映画配給会社ではヒットしそうな作品の[買い付け]、映画館や動画配信会社に上映してもらうための[交渉]、そして多くの人に見てもらうために予告編集や舞台挨拶などをおこなう[宣伝]の3つの業務があります。
しかし近年[宣伝]に関しては、広告代理店が宣伝や告知を代行するケースも出てきています。
映画配給会社で働く際は、世の中が求めている作品を買い付けるトレンド力や各映画館で上映スケジュール枠を抑える際の交渉力、どんな宣伝をすると興味を持ってもらえるかという創造力が必要です。
映画業界の中でも花形と呼ばれる映画配給会社の代表的な企業としては、[ソニー・ピクチャーズ・クラシックス][松竹][帝国キネマ]が挙げられます。
映画館運営会社
映画館の運営会社は、映画館を利用する利用者に向けて配給会社から買い取った映画を上映します。
最近では映画を上映するだけでなく、音楽ライブや舞台の中継をするライブビューイングなどをおこなう映画館も増えてきています。
映画館運営会社で働く際は、一般客と接する機会が多いため、おもてなしの心やコミュニケーション力があると良いでしょう。
映画館運営会社の代表的な企業としては、[TOHOシネマズ][ワーナー・マイカル・シネマズ][ユナイテッド・シネマ]が挙げられます。
動画配信会社
動画配信会社も映画館運営会社と同じく、配給会社から買い取った映画をNetflixなどの動画配信サービスで配信しています。
また映画だけに限らずドラマや音楽ライブなどの動画制作や配信をおこなっている会社も多いため、映画以外の映像作品に触れる機会も多くあるようです。
そのため映画以外の映像作品にも関わっていきたいと考えている人は、動画配信会社も選択肢に入れると良いでしょう。
動画配信会社の代表的な企業としては、[WOWOW][Netflix][HJホールディングス]が挙げられます。
映画業界の主な職種
上記で紹介した4つの分類のうち、どの業態に所属するかによって映画との関わり方は異なります。
以下では[映画製作]と[映画配給]に分けた場合、それぞれにどのような職種があるかを紹介します。
映画制作に携わる職種
映画プロデューサー | 映画プロデューサーは、映画の企画から制作、資金管理までを統括。キャストやスタッフの選定、撮影スケジュールの管理、予算調整なども担当。映画の制作全体を円滑に進め、限られた予算で優れた作品を生み出す。 |
映画監督 | 映画監督は撮影現場における現場責任者。俳優への演技指導・カメラワークや照明などへの指示といった撮影・編集プロセスに積極的に関与し、作品の全体的なビジョンを実現する。 |
脚本家 | 映画プロデューサーの企画に基づき、ストーリーやキャラクターを考え、それらをもとに台本(脚本)を作成する。 |
演出家 | 演出家は脚本家が作成した台本をもとに撮影計画を策定し、脚本家が伝えたい感情表現が視覚的に伝わるよう撮影現場では演技やシーンの演出などを指導する。その際、作品のビジョンを具現化する。 |
カメラマン | 監督・脚本家の意図を読み、撮影するアングルやフレーミング、照明の設定などを調整し求められる演出を撮影する。 |
映像編集者 | 撮影された映像の中から不要な映像をカットするなどして必要な映像だけを選別し、さらに特殊効果を組み込み、音楽をつけて映像を作成する。映画監督・演出家と連携し映画を作り上げる。 |
上記以外にも映画で使用する音声を収録し、聞きやすいように調整する[音声]や照明機材を駆使し、光や色合いの演出を手がける[照明]、映画で活用する小道具や大道具を用意する[美術]など専門スキルを必要とするさまざまな職種があります。
映画配給に携わる職種
映画がヒットするかどうかは作品の中身だけでなく宣伝方法によっても異なります。
その宣伝の役割を担っている映画配給では、映画の売買や宣伝を通して映画の魅力を世の中に普及させるための職種があります。
以下では3つの職種を抜粋して紹介します。
買い付け | 国内外の映画制作会社や映画製作者からヒットが期待できる映画の上映権(配信権)を買い付ける。 |
営業 | 買い付けた映画を劇場や配信プラットフォームで上映・配信してもらえるように、映画の魅力を伝え、映画館(映画興行会社)に販売交渉し、各映画館の営業時間から上映する時間帯や期間を確保する。 |
宣伝 | 多くの人に映画を観てもらえるよう、メディアや広告を駆使して映画の認知度を向上させ興行成績向上に貢献する。具体的には予告編やポスターの作成、役者の舞台挨拶の手配などがある。 |
映画業界の動向3選
ここでは映画業界の動向を3つ紹介します。
映画業界の市場規模
映画業界は2019年から2020年にかけて猛威をふるった新型コロナの影響を大きく受けた業界の1つです。
しかし流行が落ち着き、まん延防止等重点措置が解除された2022年以降、映画館の休館や時短営業の影響が減り、間引きされていた座席も全席開放されたことで、興行収入および入場者数が増加しました。
2022年から2023年の映画業界大手3社の決算を見ると、売上高では東宝が前年比7.0%増の2,442億円、東映が同48.3%増の1,743億円、松竹8.9%増の782億円でした。
このように主要映画会社3社そろって増収を記録しており、中でも東映がコロナ前の水準を上回る結果となったことからも、市場が回復してきていると言えるでしょう。
邦画アニメーション映画のヒット
日本の映画でヒットしたとされる基準は『興行収入10億円以上』と言われている中、ここ数年の興行収入ランキングを見ると、2019年から2022年の4年連続で邦画アニメが興収100億を突破し1位を獲得し続けています。
2019年:天気の子(141.9億円)
2020年:劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(404.3億円)
2021年:シン・エヴァンゲリオン劇場版(102.8億円)
2022年:ONE PIECE FILEM RED(197.0億円)
コロナ以降売上が回復した2022年の興行収入ランキングでは、1位の[ ONE PIECE FILM RED]に続き、2位[劇場版 呪術廻戦 0(138.0億)]、3位[すずめの戸締まり(131.5億)]も邦画アニメかつ興収100億円を突破していることからも、邦画アニメの需要が高く市場をけん引していることがわかります。
映画と動画配信の在り方
しかし『ROMA/ローマ』(アルフォンソ・キュアロン監督)という映画は2018年にNetflixで公開、そして2019年に映画館で上映するという、今までの慣行とは異なる形で展開されました。
また最近では、TOHOシネマズが2023年6月1日以降の映画鑑賞料金を一般1,800円から1,900円に改定しています。
このように配信と映画の差が縮まる中で映画の鑑賞料金が上がると、将来的に映画離れなどの問題が起きることが考えられます。
そのため映画業界は、今後これまでの[映画館で上映した後、二次利用として動画配信の選択肢がある]というスキームから、[配信後の映画上映]もしくは[映画上映後の配信]といったスキームに変わっていくかもしれません。
映画業界の優良企業とは?
映画業界というと「東宝」「東映」「松竹」といった大手企業を思い浮かべる就活生が多いのではないでしょうか?とはいえそれぞれの違いを理解している就活生は少ないでしょう。
しかし就活では「その会社でなければならない理由」を志望動機を通して伝えなければなりません。つまり志望企業と競合他社との違いを理解しておく必要があるのです。
そこで以下では各社の採用サイト、マイナビ・リクナビ等の求人サイトに掲載されている情報をもとに、「東宝」「東映」「松竹」3社の企業概要を紹介します。
東宝株式会社
東宝は映画の企画・製作、配給及び売買をおこなっている[映画事業]の他にも、著作権、商標権などの知的財産権の運用・管理をおこなう[賃貸]、演劇の企画や製作請負等をおこなう[演劇]土地および建物の賃貸などをおこなう[不動産経営]といった事業があります。
- 会社名:東宝株式会社
- 設立年:1932年8月
- 従業員数:グループ3,297人(嘱託510人を含む)
- 初任給:240,000円(固定手当25,000円を含む)※2023年度実績
- 平均勤続勤務年数:15.6年(2021年度)
- 平均有給休暇取得日数(前年度実績):10.8日(2021年度)
- 福利厚生:退職金制度・住宅資金融資・旅行補助制度など
- 2022年の新卒採用者数:10名
参照元:東宝株式会社/採用サイト
東映株式会社
東映は、映画をはじめとする多様な映像制作を中心に多角的な展開を手掛ける[総合コンテンツ企業]として、東映のビジネスの根幹である[映画事業]を中心に、テレビドラマ事業・教育映像事業など14の事業領域を展開しています。
- 会社名:東映株式会社(TOEI COMPANY, LTD.)
- 設立年:1949年(昭和24年)10月1日
- 従業員数:384名(2023年9月30日現在)
- 初任給:247,300円(基準本給・住宅手当)2023年度実績
- 平均勤続勤務年数:16.5年(2021年度)
- 平均有給休暇取得日数(前年度実績):11.7日(2021年度)
- 福利厚生:独身寮・社内試写室・社員食堂など
- 2022年の新卒採用者数:11名
参照元:東映株式会社/採用サイト
松竹株式会社
松竹は、実写およびアニメ・特撮映画の製作宣伝等に携わる[映像事業]・歌舞伎や一般演劇に携わる[演劇事業]そしてビル賃貸や不動産管理などをおこなう[不動産・その他事業]の3つを主体とする、総合エンタテインメント企業グループです。
- 会社名:松竹株式会社(Shochiku Co., Ltd.)
- 設立年:1920年(大正9年)
- 従業員数:597名 (2023年2月28日現在)
- 初任給:247,640円 (2022年4月実績)
- 平均勤続勤務年数:15.1年(2022年度)
- 平均有給休暇取得日数(前年度実績):12日(2021年度)
- 福利厚生:従業員持株制度・財形貯蓄制度など
- 2022年の新卒採用者数:10名
参照元:松竹株式会社/採用サイト
映画業界にも隠れ優良企業は多数ある!
映画業界には先ほど紹介した大手3企業以外にも映画に携わっている企業はたくさんあります。以下にて中小企業を一部紹介します。企業選びの幅を広げていくためにも是非チェックしてみてください。
映画業界の求める人物像
やはり映画やアニメ、演劇を観たり創ったりすることが好きであるという点は何よりも大事です。
その情熱に加えて、「お客様が求める作品はどういうものなのか?」「どのような作品がお客様の心を動かすのだろうか?」といった点を考え抜き、本当にお客様が求めている作品を届けるために、プロとしてのこだわりを持ち、根気強く行動できる力があるとさらに良いでしょう。
そして映画業界で働きたいと考えている人の多くは未経験だと思います。だからこそ新しい知識・未知の経験をポジティブに吸収し、自分の武器を増やしていくことができるような成長意欲が高く向上心のある人は映画業界に向いているでしょう。
最後に、1本の映画を作成するには、映画プロデューサーや監督、キャストや脚本家、カメラマンや音響、照明、美術などの様々な職種の人と協力する必要があります。
その他にも、映画の宣伝や告知の役割を担っている映画配給会社や映画を上映している映画館運営会社の人と関わることもあるでしょう。
このように社内外問わず様々な人と接する機会が多いため、コミュニケーション能力は欠かせません。
つまり映画業界で求められる人物像をまとめると以下のようになります。
・プロとしてのこだわりを持ち行動することができる
・成長意欲が高く向上心がある
・コミュニケーション力がある
映画業界を希望する就活生がしている選考対策
繰り返しになりますが映画業界は、華やかなイメージから就活生に人気がある業界でありながら採用枠が少なく採用難易度の高い業界の1つです。
そのため選考で勝ち抜くためにも、自分が今おこなっている就活準備だけで準備が足りているかを確認し、やっていなかったことに対しては準備をしていきましょう。
やりたい仕事を明確にする
映画に関わることができる仕事として[映画製作会社][映画配給会社][映画館運営会社][動画配信会社]を紹介しました。
上記で紹介した4つの業態は、仕事内容や職種、作品に関わるタイミングが異なります。
面接では「なぜこの会社?」「なぜこの職種?」「他に受けている会社はどういったところ?」「将来やりたいことは?」といった質問を受けることがあります。
そのため、面接前に自分の興味のある仕事がどの業態でできることなのか、何職に当てはまるのかを明確にしておきましょう。
映画業界ならではの面接内容
映画業界の面接では、「最近見た映画で、印象に残っている映画は?」「映画はよく見られますか?」「好きな映画を教えて下さい。」といった質問は頻出問題です。
映画に興味があるかを知りたいだけではなく、「選んだジャンルから感じるあなたの個性」「話をまとめる力」「映画に対する情熱」などを面接から汲み取ろうとしています。
そのためどの作品について話すか、作品の要点を把握できているかを考えておくことをオススメします。
また、エントリー数の多い映画業界では面接の他にWebテスト受験や小論文の提出を求める企業もあるため、準備しておくと良いでしょう。
どれだけ対策をしてきたかによって結果が大きく変わってくるため、Webテストに自信がない人はできるだけ早めに取り掛かりましょう。
インターンに参加する
インターンを実施している映画会社もあります。競争率が高い業界でもあるので、長期インターンに参加しながら正社員の道を目指すのも1つの手段でしょう。
また、会社の雰囲気や業務内容の理解などにも繋がります。
もちろん「インターンへ参加したから正社員になれる」「インターンに参加しないと選考が通らない」というわけではありません。
そのため、参加できなかった人でも自己分析や企業理解をしっかりおこない、面接で差別化ができるようにしておきましょう。
それぞれの特徴を理解して自分に最適なものを選びましょう。
まとめ
本記事を通して、映画業界の業界動向やビジネスモデル、仕事内容について理解を深めることはできましたでしょうか?
就活で自分が志望している業界の選考を突破するためには、業界に関連する情報を集め、その業界に対する理解を深めておくことが重要です。
中でも業界研究をする際は、[その業界では今どのような動向があるのか?][どういう市場状況なのか?][どのような人材が求められているのか?]といったことまで調べられると、他の就活生と一味違った自己PRや志望動機を作成することができるでしょう。
業界研究をより深くおこないたい就活生は、下記の記事を是非参考にしてください。
本記事では業界研究のやり方やオススメの本も紹介しています。業界研究初心者は必見です。
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