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【企業トップ×就活生対談】モノの「後始末」を世界的なビジネスに-会宝産業-

「知っている企業以外の優良企業を探したい」「ナビ掲載の企業を見ていてもイマイチ魅力がわからない」と悩む就活生は多いと思います。この企画では私たち大学生が社長や人事部長へのインタビューを通して企業の魅力や想いを伝えることで、みなさんの「わからない」を「わかる」に変えます。

今回は大学生の松村が、会宝産業株式会社の近藤社長にお話を伺いました。

同社は日本最大級の中古自動車部品輸出会社であり、世界約90ヵ国とのネットワークの中で「静脈産業」発展のエンジンとなっている会社です。

目次

企業を知ろうー会宝産業ってどんな会社?ー

会宝産業株式会社の4P

会宝産業について、会社の魅力を4つのP(理念・職業・人事・組織)でまとめてみました。

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実際にどんなことをやっているの?

会宝産業は1969年に自動車解体および鉄くず、銅、アルミ等の販売を行う会社としてスタートしました。1991年にクウェートの顧客が中古自動車パーツを買い付けに来たことを転機に、海外に向けた中古部品のリユース販売を本格的に始めました。

日本で廃車となった自動車を解体し、分解して使用できる部品をリユース部品として海外各国に輸出しています。このように古くなっても使えるものを再利用できるようにしていく産業は静脈産業と呼ばれます。会宝産業は静脈産業のパイオニアとして世界的なものの循環に携わっています。

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廃車を解体する作業
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エンジンを保管する倉庫

現在約90ヵ国と中古部品販売のネットワークを持ち、「KRAシステム(※1)」と呼ばれる独自の業務基幹システムを使い、車両の仕入れ・生産・在庫管理・販売に至るまでの情報を一元管理することで、商品のトレーサビリティ(※2)を確立し、世界中から信頼を得る取引を実現させています。

SDGs達成促進に向けて、国連が手動する「BCtA(※3)」に日本の中小企業・静脈産業として初めて参加承認を受けました。この承認を背景として、発展途上国の廃車が引き起こす環境問題の解決に向けて会宝産業が取り組みを進めていることが評価されています。このように本業を通じて社会問題解決に積極的に取り組んでいる企業です。

※1 KRAシステム:Kaiho Recyclers Allianceシステムの略称
※2 トレーサビリティ物流の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態のこと。
※3 BCtA:長期的視点で商業目的と開発目的を同時に達成できるビジネスモデルを模索・促進する取り組みとして、国連開発計画(UNDP)を含む6つの開発機関・政府が手動する「Business Call to Action」の略称。

次の項目からは、会宝産業の近藤社長との対談の内容をお伝えします。社長になるまでの経緯や悩んでいる学生へのアドバイスをもらいました!

【インタビュー】社長になるまでの経緯

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ーはじめまして。本日は貴重なお時間を頂き誠にありがとうございます。

これからインタビュー始めていきたいので、ぜひよろしくお願いします!

近藤社長:はじめまして!こちらこそよろしくお願いします。

ーはじめに社長になるまでの経緯についてお聞きしたいです。

近藤社長:私の父が創業者として1969年にまず近藤自動車商会というものから立ち上げたのがこの会社の始まりです。

父は非常に厳しい人で、甘えさせてもらえませんでした。「人の三倍働け」と「人の嫌がる事をとにかくしなさい」と昔から言われていましたね。

子供のころは、家に帰っても結局両親ともに会社で働いてました。いわゆる鍵っ子だったんです。学校と家のちょうど中間地点に会社があったので、家に帰っても一人で寂しかった私はよく会社に行っていました。

このころは何気なく働いていた社員の方にも可愛がっていただいたりして過ごしていたのですが、車を扱っているなというくらいにしか会社のことは知らなかったですね。

小学六年生の将来の夢で「会社を継ぐ」と書いて以来、中学、高専に進学しても将来のことは「会社を継ぐ」ことしか考えていませんでした。今考えると、夢は叶いましたね。

しかし学生時代は、野球、サッカー、水泳、ボクシング、バスケットボールとたくさんのことに挑戦したにもかかわらず、忍耐力が欠けていて、なかなか続けることができませんでした。

高専を出た後、「会社の事業の1つに輸出があるから、語学を学んできたほうがいい」という父の勧めからアメリカに語学留学にいきました。しかし、留学では全然英語も覚えずに、ただ遊んでいただけでした。

半年間アメリカで過ごして、帰ってきた後に入社。自動車リサイクルの事業をやっていると言うことが分かってきたのはこの頃です。「儲けを出さなければいけない」と一番に考えて、ただただ働く毎日でした。

入社から3~4年経った時、オーストラリアにいた私の父のマレーシア人の友人が「26歳までに英語を覚えないともう覚えられないよ」ということを父に言ったらしいんですね。

ちょうど私が26才になったころでした。「半年で覚えてこなかったからもう一回いってこい」と言われ、また留学することになったんです。

まず、語学学校に半年在籍し、そのあと現地の専門学校に入って3年間学校に行きながら、丁稚奉公をしていました。ただこの3年間でも大して英語を覚えられませんでした。もともと語学があまり好きではなかったんですね。

3年後帰ってくると、10人も満たなかった社員が40人ぐらいまで増え、大きく組織が変わっていたんです。特に、若い人たちがとても増えていました。

そんな若い人たちにとって、急に帰って来た社長の息子の私は下に見られていました。もちろん立場上は私が上司でしたから、部下を抑えることはできました。しかしこのままじゃ駄目だと感じていました。そこで「3年間は我慢しよう、我慢して私のことを認めさせなければ駄目だ」とそう決意し、行動を始めたんです。

自分自身を変えていかないと相手に伝わらないのではないかと思い、言葉でなく態度で示そうと思ったんですね。たくさん働いて行動で示して、何とか認めてもらえるように頑張りました。その結果、信頼してもらえるようになりました。自分も変えることができたし、相手の若手たちも変えることができたんです。

そして2015年に社長の役割を父から引き継いで、社長として経営する今に至ります。

ー社長になられてから大変だったことはありますか。

近藤社長:父から引継ぎの話が出たときに「すぐに会社全体をまとめる勉強をしなさい」と言われました。私なりに「全体をまとめなければ…!」と必死に学びました。

しかし引き継いだ2015年の業績を下げてしまったんです。さらに翌年2016年には20数年ぶりに赤字を出してしまいました。そこで一度挫折してしまいましたね。やれども、やれども業績がついてこないんです。

私は、世間一般でいう素晴らしい経営者がどんな経営者か、見るようになりました。そこで業績をガンガン上げてる経営者さんが素晴らしいと勘違いして売り上げにこだわりました。その結果、お客さんを引かせていたのではないかということに気づいたんです。

当時の私は、自分をかっこよく見せたいがあまり、数字を上げればみんなが認めてくれるだろうなという短絡的な思考を抱いていたんです。社員やお客さんのことをまったく考えていませんでした。

その結果として数字に跳ね返ってきましたし、当然お客さんは逃げていきました。ここで初めて商売の原点はお客さんに喜んでもらうことだと気づき、利益本位でないお客さん本位の方針に変更したんです。その結果、2017年にV字回復を遂げ、続く18年、19年までずっと上がり続けています。

【インタビュー】「後始末」のビジネスを知ってほしい!

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ー将来の展望はどんなものでしょうか。

近藤社長:将来は、やはり「後始末」というものを世界に広めていきたいと考えています。まず知ってほしいなという思いが強いですね。

例えば、自分の使った後のモノへ興味があるか考えてみてください。まずないと思います。

逆に、新しいものには興味ありますよね。新機種だとかニューモデルだとかにはすごい興味を引かれるはずです。

使い終わった後のモノには誰も興味がありません。でもそこにチャンスがあると、その事実に向き合うべきだと伝えていかなければいけないと思っています。

多くのメーカーさんは「皆さんにとって必要なものを作りました」と上手に伝えています。だからみんな新しいものに興味を引くんですね。しかしわたしたち後始末の会社は何もアピールできていないんですよ。

後始末をしなかったら、ゴミの山ができあがります。誰かが後始末をしているから綺麗な日本を保っています。しかし誰も後始末に興味が無く、ビジネスにしない。そうしていったらどうなるか。深く考えなくとも想像できると思います。

自然環境も全く同じシステムで動いています。モノが生まれて、死んで、朽ち果てたあと、そのバクテリアや細菌たちが分解してまた栄養素に戻す。循環は自然界にもあるにも関わらず、人間界では循環が認識されていないんです。だから私はそんな大切で誇りある仕事があることを発信していきたいと考えています。

私は会社説明会で必ず学生さんに「みなさん良い会社に入りたいですか?」と聞きます。

もちろんみんな手を挙げます。そこで「良い会社ってどんな会社なんですか?」と聞くと、会宝産業の会社説明会にきているのにも関わらず、「ものづくりの会社は素晴らしい、行きたい」とよく言うんです。

そこで「会宝産業は、良い会社に入りたい人はいりません。うちが欲しいのは、良い会社を自ら創る人に来てほしいんです」と伝えています。

入っても100%良い会社は多分ありません。これが100%な会社は自分が創業した会社くらいです。何だかんだ、上司や制度などに対して不満を抱えるわけです。

100を探すのではなく、自分もその会社を作り上げていくスタンス。どんな風にしたら自分の理想になるのか、会社理念に基づいたかたちを作ることができる、そんな社員に入ってほしいなと思います。

【インタビュー】学生に向けて

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ーさいごに学生へのメッセージをお願いいたします。

近藤社長:これからの時代は、自分本位の考えではいけません。これは学生でない人でも言えることですね。結局商売とは与えることです。相手に与えることによってそれが返ってくる「タライの法則」のような考えが大事になってきます。

「タライの法則」とは、たらいに入った水を自分の方にかくと、水はたらいを伝って外側に逃げていってしまう。逆に、水を前に押し出すようにかくと、同じようにたらいを伝って自分の方に返ってくるというものです。

だから自分が良ければそれでいいと思う人でなく、人のために一生懸命にやっている人に自然と返ってくるようなスタイル、そんな人間に育ってほしいです。

業界を知ろうー静脈産業とは?ー

業界の構造と仕事内容

会宝産業さんの行っている自動車リサイクル事業は静脈産業と呼ばれる産業に含まれます。血液の循環に例えて、製造業など製品を生み出す「動脈産業」とその廃棄物を回収して再生・再利用、処理・処分を行う「静脈産業」として例えられます。現在廃棄物・リサイクル関連法によって廃棄物処理や環境負荷を低減するためのコストが上昇しており、今後の成長が見込まれている分野です。

例えば下の図のような「自動車リサイクル産業」で考えると、中古車の販売、中古車を解体して出る自動車部品の取引、部品をさらに解体して再利用できる資源に戻す再資源化が静脈産業と呼ばれます。逆に自動車の製造や販売は動脈産業といいます。

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会宝産業HP「5分でわかる会宝産業」より

業界の市場と動向

環境省のデータによると、2016年の中古自動車部品卸売業の年間販売額は2420億円、中古自動車販売業に至っては3兆4142億円です。

2017年の日本国内のリユース産業市場規模だけで約2兆円、リサイクル等の再生資源、中間処理、及び収集運搬廃棄物処理業の市場規模は約12兆円と言われています。この合計14兆円の規模は、コンビニエンスストア市場の11兆円や、鉄道業界の市場の10兆円と比較するとその規模の大きさがわかると思います。さらに2015年のアジア、アフリカ全体でのリユース・リサイクル市場は約140兆円と言われています。

もともと静脈産業は、廃棄物処理の延長線上に捉えられており、産業として確立されていませんでした。昨今、SDGsの達成に向けた世界的な動きの中で、ゴール12「つくる責任・つかう責任」やゴール13「気候変動に具体的な対策を」といった環境問題が起因するゴールに向けて、静脈産業の活躍が欠かせないものとなっています。つまりこれからの時代において、成長余地がたくさん残されており、多くのビジネスチャンスをはらんだ業界と言えます。

「SDGs」が注目される今、静脈産業は急激に成長を続けています。

【参考サイト】

さいごにー会宝産業のインタビューを通してー

近藤社長の「後始末産業」にかける想いがとても印象に残りました。会宝産業の手掛ける「静脈産業」は世界的なビジネスとして成り立っているにも関わらず、認知度の低い業界です。私もインタビューするまで全く知りませんでした。

今回のように皆さんがよく知っている企業のほかにも魅力のあふれる企業はたくさんあるのだと実感しました。 

改めて、近藤社長貴重なお時間をありがとうございました!

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