繊維業界とは私たちが普段着ている洋服やスーツの材料などに使われている天然繊維や化学繊維を扱う関連産業のことです。
本記事では、繊維業界の動向や仕組みについて紹介するだけでなく「どういうビジネスモデルでどんな仕事をしている?」「どういうスキル・知識が求められる?」という人に向けて、業界の動向やキャリア、志望動機、自己PRの書き方についてわかりやすく解説していきます。
また繊維業界の売上や利益、年収、従業員数、勤続年数をランキングで紹介しています。
ビジネス規模や働きやすさ等がわかるので、ぜひあわせて確認してみてください。
繊維業界の仕組み
繊維業界は、天然繊維(綿花・羊毛・絹など)や天然繊維を加工して作る人口繊維(レーヨン・アセテートなど)、そして合成繊維(ポリエステル、ナイロンなど)を加工し、糸・織物などの生産を行っています。
近年では大手各社を筆頭に、繊維生産で培った技術力を応用し、自動車、建築、IT、医療などの他分野へも進出しています。
下記にて繊維業界のビジネスモデルと職種を確認してください。
繊維業界のビジネスモデル
衣類製造に使われる化学繊維や天然繊維は糸や布といった素材となり、繊維製品として商品化され、店で販売されるという、大まかな業界の流れがあります。
■繊維の種類
繊維業界が扱う繊維は、大きく分けると化学繊維と天然繊維の二種類です。
化学繊維は化学を活用して作られたポリエステルやナイロンなどです。
化学繊維の中には、衣類用だけでなく、自動車や飛行機の素材として使われるものや人工血管など医療分野に応用されているものもあります。
これらは、冷感、発熱、速乾、形状記憶といった加工機能がバラエティに富んでおり、大量生産が可能なことから、天然繊維に比べて比較的低価格で購入可能です。
一方、天然繊維は綿などの植物や羊などの動物のように自然から取れる素材を利用して作った繊維です。
代表的なものとしてはウールやコットンなどが挙げられます。
天然繊維は、絹を除いて繊維長が短かい繊維(綿や羊毛といった20㎜~麻の600㎜)をより合わせて1本の長い糸にする「紡績」という工程があります。
繊維による違いから、現在は天然繊維よりも化学繊維のほうが多く使われており、より高性能で高機能な新しい繊維の開発にも注目が集まっているようです。
繊維業界の職種
他の業界同様、人事・総務・経理財務などの職種もありますが、ここでは、繊維業界ならではの4つの職種について紹介します。
■研究開発
研究では商品に使われる繊維の研究・実験・解析、性能及び安全性評価や生産技術の開発などを行います。
日々品質の向上を追求し、改善・改良を繰り返します。
繊維といっても種類はさまざまであり、用途もアパレルで使用される糸や人工皮革、建築業界で利用されている住宅用の断熱材、自動車の内装など、多岐にわたります。
そのため、繊維全般の知識を獲得することが求められます。
■商品開発
商品開発は顧客ニーズをもとに商品設計を行うのが主な業務です。
開発の際には、自動車メーカーやアパレル業界など繊維製品を必要とする顧客と連携を取りながら製品の開発を行います。
この職種では専門性だけでなく視野の広さも求められます。
■生産
繊維企業の多くは自社に工場を持っており、糸や生地を大量生産しています。これらの生産工程の管理、完成品の品質管理をおこなうのは生産の業務です。
生産工程の管理では、国内外の生産現場における繊維・複合材料・樹脂・ケミカル・重合設備といった製造設備の設計から開発も行います。
また、品質管理では生産ラインの状況を随時把握し、発生した問題に対処するだけでなく、さらなる不良品が発生しないように効率的に生産する方法を立案します。
これらのポジションは商品開発のための根本的な技術を開発する職種であるため非常に高度な専門性が要求されると言えるでしょう。
■営業
営業は自社の製品をさまざまな企業やメーカー、ユーザーに売り込んでいきます。さらに、顧客の要望を研究や商品開発に伝えることも仕事の1つです。
繊維といっても種類はさまざまであり、用途もアパレルで使用される糸や人工皮革、建築業界で利用されている住宅用の断熱材、自動車の内装など、多岐にわたります。
そのため、繊維全般の知識を獲得することが求められます。
【2023年最新】繊維業界の動向5選
ここでは繊維業界の動向を下記にて5点紹介します。それぞれ以下のトピックスについて紹介しているので、確認しておきましょう。
・大手を中心に高機能繊維が好調
・環境問題への対応
・衣類廃棄問題
・デジタル化の推進
市場規模
繊維業界の業界規模は2018年から減少傾向にあり、2020年-2021年の売上高は3兆4,314億円となっています。
2020年に新型コロナウイルスが世界的に拡大したことに伴い、衣料向けのみならず航空機や自動車などの産業用の需要が減少しました。
一方で、マスクやガウンに必要な不織布の国内生産の需要が高まったため、東レや三菱化学、シャープやアイリスオーヤマなどが、不織布の増産やマスクやガウンの生産を進めました。
参照元:繊維業界の業界規模/業界動向サーチ海外進出に注力
現在、国内の繊維業界は、中国や東南アジアからの安価での大量輸入、衣料品の伸び悩みなどを背景に、縮小傾向にあります。
一方、国内市場の縮小とは逆に、新興国では人口増加や経済成長に伴い繊維の需要も増えていることから、国内繊維メーカーの海外展開が加速しているのです。
東レは米ボーイング社と10年以上にわたり1兆円を超える次世代航空機の共同開発を盛り込んだ炭素繊維の受注を発表しています。
その他にも東レでは、インドに自動車のエアバック用の生地を産する工場を設営、帝人では、耐熱性に優れるアラミド繊維の製造・販売を行うグループ会社をタイに設立するなど、各社グローバルな展開を進めています。
■M&A
繊維業界では、大手企業による海外市場へのM&A(クロスボーダーM&A)が増加しています。
海外市場へのM&Aには独自のブランドやノウハウの取得が目的となっているものもあれば、海外でも店舗展開や生産ラインの獲得などといった目的で行われるケースもあるようです。
また国内においても、通販サイトなど販路拡大やブランド力の強化を目的としたM&Aが増加しています。
昨今はコロナの影響もあり通販による販売を行う会社が増加しました。しかし通販を行っていくためのノウハウやシステムをゼロから構築することは決して簡単ではありません。
そのため、すでに通販を行っているEC事業などを買収し、そのノウハウやシステムをそのまま引き継ぐ会社が多くあるようです。
また主に衣服・装飾品製造ではブランドが与える影響力は大きく、特定のブランド名を掲げているだけで顧客がつくこともあることから、ブランド力の強化を考えている企業も多いです。
今や繊維は衣料品業界にとどまらず、医療や自動車産業などの様々な分野に利用されています。
他業界への知識や技術の応用を各企業で進め、M&Aで新たな挑戦をしつつ、グローバル展開を行っているのが今の状況です。
大手を中心に高機能繊維が好調
大手企業は炭素繊維(※)やアラミド繊維、高機能ポリエチレン繊維など価格競争力のある高付加価値製品へと生産をシフトしています。
また樹脂や工学フィルム、電子関連、バイオ、医薬など繊維事業でのノウハウを活かせる非繊維事業へとコア事業をシフトする企業も増えているようです。
アクリル繊維を焼成して作られる高機能繊維「炭素繊維」は、鉄に比べ、4分の1の重さでありながら10倍もの強度があります。
そのためゴルフクラブ、釣り竿などのスポーツ用品に使われるほか、自動車や航空機、宇宙用品の部材としてとして使われるなど、他産業への需要が拡大しています。
環境問題への対応
繊維産業は、衣服などの素材となる繊維の生産から衣服の製造、販売までを行う産業ですが、その過程や消費から廃棄までの間に生じる環境汚染が問題となっています。
ポリエステルやナイロン、アクリルといった主要な化学繊維は、そもそもプラスチックからできています。
そのため、プラスチック対応の焼却炉で燃やさないと、人体に有害な物質が発生することがあるようです。
このように原材料の調達、生地・衣服の製造、そして輸送から廃棄に至るまで、環境負荷が大きいことから、現在、企業においては環境負荷を少しでも低減させるための様々な取り組みが図られています。
■衣類廃棄問題
現在、世界のアパレル・繊維業界の課題として「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」が問題視されています。
このような問題の背景には、ファッションのコモディティ化、アパレルの大量在庫を前提とする商慣行や、ブランド価値棄損を回避するためのメーカーによる未使用品の焼却等、衣類の廃棄問題が世界的に顕在化しつつあります。
現状、衣類がごみとして廃棄された場合、再資源化される割合は5%程でほとんどはそのまま焼却・埋め立て処分されており、その量は年間で約48万トンと言われています。
この数値を換算すると大型トラック約130台分を毎日焼却・埋め立てしていることになります。
このような資源の浪費や環境への悪影響等が懸念される現状を受けて、現在世界中で解決に向けた法制化や環境にやさしい素材の開発そしてサスティナブル(持続可能)な取り組みが進められています。
参照:環境省|令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務
デジタル化の推進
現在、デジタルツールの多様化により、自社の課題に応じたデジタルツールの活用が可能になっています。
例えば企画・生産段階では、AIによる需要予測やシステム上での3Dパターン製作により、供給量や生地の効率化に貢献できるとされています。
実際にTFLでは、企画段階において3Dパターンの型紙製作ができたことで、システム上でサンプル製作が可能となりました。
生産決定までサンプルを何度も作り直してきた業務が効率化され、サンプル生地の廃棄削減繋がったようです。
他にも、生産に関わる工場やサプライヤー情報をクラウドで一元管理して品番や仕様の認識ミスを防止する取り組みがあります。
また店舗ごとの在庫の「質」をデジタル化・可視化し、正価販売すべき商品リストの作成を通じて、不要な値引き販売の抑制や、在庫消化率の向上を図っている事例もあります。
また顧客の要望に応じながら大量生産を可能にする「マスカスタマイゼーション(※)」やサブスクリプションサービスの展開により、供給量の適正化も可能と考えられています。
参照元:経済産業省|第5回 繊維産業のサステナビリティに関する検討会 デジタル化の促進繊維の将来を考える会|繊維の将来宣言
繊維業界の動向を知ることは選考を突破するために必要です。
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繊維業界の求める人物像
繊維業界では、常に顧客に求められる新しい素材を開発しています。
そのためどのような素材がどのように応用できるのかを考えられる発想力がある人は向いていると言えるでしょう。
またトレンドをいち早く掴み、ファッションデザイナーなどが求めている素材や商品なども把握しなくてはなりません。
そのため、日々周囲にアンテナを張って、物事に取り組んでいく姿勢も必要です。
その他にも、顧客とのやり取りでニーズを汲み取るために関係構築力やコミュニケーション力も必要不可欠です。
そして現在、繊維業界は国内だけではなく、海外で活躍している企業が多く、活躍の幅は非常に広いです。そのためグローバル思考がある人・英語力があるとなお良いでしょう。
繊維業界で評価される自己PRの書き方
自己PRを書く際は基本的に「強み⇨エピソード⇨結果・学んだこと⇨入社後どう活躍できるか」の順番で書きます。
(1)結論
自己PRを書く際は最初に「私は○○することができます」といったように自分の長所を端的に述べます。
その際、繊維業界や自身が希望する企業の求める人物像に合わせ「発想力がある」や「関係構築力がある」といった長所を選ぶようにしましょう。
このように最初に結論を述べ面接官に今から何の話をするのか伝えることで、聞き手側も話が入りやすくなります。
そのため、自己PRをする際は結論として、まず長所を伝えるようにしましょう。
以下で「発想力がある」という長所を選んだ場合の例を紹介します。
(2)エピソード
長所を伝えたら、実際にその長所があることを証明できるエピソードを交えます。
理由としては、企業は、課題・目標やそれに対する行動を通してその人の人柄や価値観を判断しているためです。
(3)結果・学んだこと
エピソードの次は、自分がとった行動によってどのような結果になったか、この経験を通して何を学んだのかについても書きます。
また、結果を書く際は定量的に伝えることでよりイメージしやすい自己PRを作成することができるため「〇〇というアイディアを出し実践したところ、売上を40%上げることができた」など、数字を用いてアピールしてみましょう。
(4)入社後どう活躍できるか
企業は採用活動を通して、自社に貢献してくれる人材を求めています。つまり、面接官にこの学生は「自社で活躍する素養がある」と思わせることが大事です。
より詳しい自己PRの書き方について知りたいという方は以下の記事を参考にしてください。
繊維業界で評価される志望動機の書き方
繊維業界の志望動機を書く際は「なぜ繊維業界なのか」「なぜその会社なのか」をしっかりと深堀りしておくことが必要です。
具体的には自分が将来何を成し遂げたいのか、例えば「繊維の力で暮らしを豊かにしたい」「新素材の開発によって、国内の産業を活性化させたい」などといった眼鏡業界ならではの理由を述べるようにしましょう。
“なぜその会社なのか”については、他の企業ではなくその企業でなければいけない理由を伝えます。
例えば東レは繊維業界を代表する有名企業の1つです。
業界1位の売上高とシェア率であり、繊維、機能化成品、炭素繊維複合材料などの分野に大きな強みを持っています。
平成25年には自動車部品を製造する童夢カーボンマジックを買収し、炭素繊維の分野を拡大しています。
企業ごとの特徴や強みを把握した上で、志望企業を決めるようにしましょう。
繊維業界の志望動機の例文を見てレベル感を掴みたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
また「志望企業に評価される自己PR・志望動機の書き方が知りたい」「選考通過率を上げたい」という方は、無料無修正エロ動画を利用してみてください。
繊維業界ランキング
ここでは繊維業界のランキングを「業績」と「社内環境」に分けて紹介します。
繊維業界の業績ランキング
参照元:業界動向サーチ/繊維業界の売上高ランキング(2021-22年)は上記企業の有価証券報告書に基づき作成しています。ランキングは上記企業のデータの合計または平均を表したものです。また企業名にあるホールディングスを「HD」と省略しています。(※2023年9月時点)売上については1位が三菱ケミカルグループ、2位が東レ、3位が旭化成、経常利益は1位が三菱ケミカルグループ、2位が旭化成、3位が東レです。
売上や利益、利益率をチェックした方が良い理由は、以下の2点です。
・利益、利益率は企業が行っているビジネスの成否を示している。
売上は企業の財務力、ビジネスの規模を表しています。つまり売上が高い企業の方が行っているビジネスの規模が大きいということです。
またA社とB社が同じ利益の場合、売上が大きい企業の方が金融機関からの融資を受けやすいとされているため、売上を見ることで企業の資金調達力もチェックすることができます。
次に利益、利益率は企業が行っているビジネスの成否を示しています。そのビジネスによる付加価値がどれくらいあるかを測る指標です。
つまり利益がほとんど出ていなかったり、赤字だとビジネスに何らかの問題があるということになります。
ただし、このランキングだけでなく、成長率も大事であるため各企業の過去についても振り返っていきましょう。
繊維業界の社内環境ランキング
参照元:業界動向サーチ/繊維業界の売上高ランキング(2021-22年)は上記企業の有価証券報告書に基づき作成しています。ランキングは上記企業のデータの合計または平均を表したものです。また企業名にあるホールディングスを「HD」と省略しています。(※2023年9月時点)年収は1位が三菱ケミカルグループ、2位がダイワボウHD、3位が旭化成、勤続年数は1位が日本フエルト、2位がダイワボウHD、3位がイチカワとなります。
勤続年数が長いということは定着率が高いということになります。一概には言えませんが、定着率が高い会社は良い会社である可能性が高いです。
また従業員数が多い会社は多様な人と関わり合うことができるというメリットがあります。
しかし多いと自分の意見が通りにくい場合もあるというデメリットもあるため、自分にとってどの環境が合っているのか考えてみましょう。
まとめ
本記事では繊維業界について紹介してきました。繊維業界は、衣食住の「衣」を支えている業界であり、まさに生活に密着した身近な産業と言えるでしょう。
また今や衣料品業界にとどまらず、医療や自動車産業などの様々な分野に利用されています。
本記事を通し、繊維業界の動向について理解ができた方は、繊維業界において自分の挑戦してみたいことなどにも目を向けてみましょう。
自分の将来について、自身の言葉で話せるようにしておくことで、面接で説得力を増すことができます。
●”繊維業界”の動向
動向(1):海外進出に注力
動向(2):大手を中心に高機能繊維が好調
動向(3):環境問題への対応
動向(4):衣類廃棄問題
動向(5):デジタル化の推進
●”繊維業界”の求める人物像
・発想力
・周囲にアンテナを張り、物事に取り組める人
・関係構築力やコミュニケーション能力がある人
・グローバル思考、英語力がある人
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