自動車は各メーカーによって差異はありますが、約2万から3万の部品から構成されていると言われています。
自動車部品業界は自動車業界に属しながら、自動車の生産に必要なエンジン、ブレーキ、ハンドルなどの部品の製造・販売をしている業界です。
本記事では、自動車部品業界の動向や仕組みについて紹介するだけでなく「どういうビジネスモデルでどんな仕事をしている?」「どういうスキル・知識が求められる?」という人に向けて、業界の動向やキャリア、志望動機、自己PRの書き方についてわかりやすく解説していきます。
また自動車部品業界の売上や利益、年収、従業員数、勤続年数をランキングで紹介しています。ビジネス規模や働きやすさ等がわかるので、ぜひあわせて確認してみてください。
自動車部品業界の仕組み
自動車部品メーカーは、自動車を製造する上で必要になる部品を開発・製造し、自動車メーカーに供給します。
自動車に使われている部品は、エンジンやトランスミッションに用いられる機械部品、車内のシートや内張に使われる繊維部品、センサーや照明といった電装部品など多岐にわたります。
下記にて自動車部品業界のビジネスモデルと職種を確認してください。
自動車部品業界のビジネスモデル
自動車部品製造業は、自動車メーカーから部品製造の仕事を受注し、その後自社で部品の開発・製造を行います。
エンジンやトランスミッションなどのパワートレイン系部品に強い会社もあれば、車体や足回りの部品を得意とする会社、電装部品を主軸とする会社など様々です。
そして部品が完成したら自動車メーカーに納品し、自動車メーカーから対価を得て収益とします。
関連記事:
【業界研究】自動車業界の動向4選!仕事内容や志望動機・自己PRのポイントも紹介
自動車部品メーカーの種類
自動車部品会社は、大きくメーカー系部品会社と独立系部品会社の2つに分かれています。
例えばトヨタ系列の自動車部品会社であれば「デンソー」「アイシン精機」「豊田自動織機」「トヨタ紡織」「ジェイテクト」といった企業が挙げられます。
これらの企業は「プリウス」や「ベルファイア」、「ボクシィ」などトヨタ車種の部品やシステムを作ることが主な仕事です。
独立系自動車部品会社には「日本精工」、「スタンレー電気」や「曙ブレーキ工業」の他、「GSユアサ」、「アルプスアルパイン」などの企業があります。
上記企業の特徴として、取引先を1社に固定せず、国内外問わず多くの自動車メーカーにビジネスを展開しています。
そのため、さまざまな自動車メーカーに対して1つの部品を提供することが可能です。
自動車部品業界のサプライチェーンの特徴
自動車部品業界は、下記図のように完成車の自動車メーカーを頂点にピラミッド構造になっており、自動車メーカーへ直接部品を納入するタイプの自動車メーカーを「ティアワン(ティア1、Tier 1)」と呼びます。
そのティア1メーカーへ納入するメーカーが「ティアツー(ティア2、Tier 2)」となり、さらにその下に「ティア3(Tier 3)」、「ティア4(Tier 4)」と続いていきます。
約2万から3万の自動車部品が全て自動車メーカーへ直接納品されるのではなく、ある程度部品をまとめて、納品点数を少なくすることで自動車メーカーの生産ラインがパンクしないように調整されているのです。
自動車部品業界の職種
他の業界同様、人事・総務・経理財務などの職種もありますが、ここでは、自動車部品業界ならではの4つの職種について紹介します。
■購買
購買の主な仕事は、自動車部品の開発・製造に必要な材料・部品・設備の調達(仕入れ)を行うことです。その際、完成時に必要となる性能とコストを管理するのも重要な役割です。
購買部門はコストダウンを目的に、常により安価で品質の良い仕入れ先を開拓したり、海外企業への発注を検討・交渉などの業務も担当します。
■研究・技術開発
自動車部品メーカーの研究・技術開発とは、顧客や自動車完成品メーカーが求める性能をできる限り低価格で実現するための部品の開発を行う仕事です。
電子技術、モーター、エンジン、トランスミッションなど様々な分野からそれぞれの専門家が集まり各種自動車の研究・開発を行います。
今後は、ハイブリッドや電気自動車(EV)、IoTなど次世代自動車にむけた研究や開発、生産技術の向上が求められるでしょう。
■生産(製造・生産管理など)
生産職においては、実際に工場で自動車部品の製造をおこなう職種ですが、その他にも材料の発注や見積もり、スケジューリングなどの生産管理も行います。
いずれの場合も共通するのは、工場でよりスムーズに部品が生産できるよう働きかけていく仕事であるということです。また生産職は、自社の工場現場で働く機会が多いです。
■営業職
自動車部品業界の営業職は、自動車メーカー、自動車部品商社などに自社の製品を販売するBtoBの営業です。
その際、自動車メーカーや商社と自社の生産部門とで価格、納期、数量などの調整を行います。
規模の大きいメーカーの場合、営業の中でも「見積もり作成を担当するチーム」「顧客との折衝を担当するチーム」「社内の関係部署を調整するチーム」というように役割分担されています。
また、多数の自動車メーカーと取引している場合は、自動車メーカーごとに担当や部署が分かれていることもあるようです。
自動車部品業界の動向4選
ここでは自動車部品業界の動向を4つ紹介していきます。それぞれ以下のトピックスについて紹介しているので、選考を受ける前に自動車部品業界の動向を把握しておきましょう。
・新型コロナウイルスの影響
(2)慢性的な人手不足
(3)部品の納品手法の多様化
(4)自動車の電子化に伴う部品需要の変化とM&A
自動車部品業界の動向(1):市場規模
自動車部品業界の市場規模は2021年-2022年で合計34.1兆円です。(主要対象企業86社の売上)
経済産業省の「生産動態統計」によると、2021年の自動車部品の生産金額は、前年比5.5%増の7兆5,951億円で、3年ぶりの増加となりました。
参照元:業界動向サーチ(2021-2022)/業界ごとの合計、または平均を項目ごとにランキング。(対象企業86社)※2022年10月時点■新型コロナウイルスの影響
2020年以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響で自動車メーカーは生産・販売体制で苦戦しており、部品メーカー各社も対応に追われています。
国際自動車工業連合会(OICA)によると、中国では2020年2月に自動車の生産・販売が前年比80%以上減少、アメリカ・カナダなどの北米ではロックダウンの影響によって99%以上減少し、欧州では93%以上減少しました。
世界全体の販売台数の合計は2020年1月~8月累計で4,558万台にとどまり、前年同期から約1,300万台という大幅な落ち込みとなっています。
これは自動車の需要の減少というよりは各社の工場閉鎖や稼働停止により生産台数が販売台数よりも減少したことが要因です。
しかし2021年の自動車部品生産金額を見てみると、まだ新型コロナウイルスが流行する前の水準には届いていませんが、3年ぶりに増加しています。
要因としては日本や北米、欧州、アジア地域でディーゼル用エンジン、ハイブリット車や電気自動車部品、先進安全自動車製品などの需要増加が挙げられます。
このことから2021-2022年の自動車部品業界はコロナ禍からの業績回復が見られた年だと言えるでしょう。
参照元:国際自動車工業連合会(OICA)|International Organization of Motor Vehicle Manufacturers自動車部品業界の動向(2):慢性的な人手不足
この問題はすべての産業にあてはまりますが、現在問題視されている日本の少子高齢化や生産労働人口の減少に伴い、今後自動車部品業界でも人手不足が深刻化することは避けられないでしょう。
特に自動車部品業界においては、ベテランの技術者が定年を迎えた際に代替となる若い世代の技術者が不足しています。
また人材を採用しようにも、自動車の開発エンジニアは専門的な技術が必要なため育成に時間を要します。
この問題に対し、現在、ロボットの導入や他の自動化手法などが解決策として活用されています。
これらの新たな手法の導入は、人手不足の問題を解決するだけでなく、24時間体制での量産と高い品質の両立、コスト削減や生産性向上にも繋がっているようです。
自動車部品業界の動向(3):部品の納品手法の多様化
自動車部品のビジネスは上記でお伝えしたように、個々の部品メーカーがその部品を自動車メーカーが必要とする時、必要な量を供給しています。
しかし近年、自動車の電子制御化が大幅に進み、部品点数の数も増大しているため、自動車メーカーが個々の部品の生産まで管理するとそこに膨大な工数が生じてしまうようになりました。
そのため個々のパーツをあるレベルに組み上げた状態で納品した方が、自動車メーカーとしては工数も、管理の手間も省けて効率的であるため、一次部品メーカーが部品を組み上げた上で納品をすることが多くなりました。
またその他にも「今まではそれぞれの車種に対して専用の部品を使用していたのに対して、今後は同じ部品にして、1種類に統一する」という『部品の共通化』も始まっています。
自動車メーカー各社が部品を統一することで低コストでの大量生産や開発コストの削減、納期の短縮が可能になります。
しかし部品の共用化は、リコールが発生した際には大量の部品交換が必要となり、部品メーカーにとっては大きなリスクを抱えているとも言えるでしょう。
自動車部品業界の動向(4):自動車の電子化に伴う部品需要の変化とM&A
自動車の電動化とは、ガソリンや軽油といった化石燃料を原料として動力を得るエンジンから、モーターで動く「電気自動車」へ移行することを指します。
今や国内外問わずガソリン車廃止の取り組みは加速しており、今後発売される自動車は電気自動車が中心になっていくことは間違いないと見られます。
経済産業省と国土交通省は、グリーン成長戦略の改定に向けて「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」を開催し、その中で「2030年代中盤に乗用車販売を100%電動化する」目標を掲げています。
つまり今まで内燃機関などのエンジンで動いていた自動車は、EV化が本格的になると内燃機関、それに関する部品が不要になり、モーター、電池に変わります。
現在、この自動車の電子化に伴い、必要とされる部品が変わってくること、そしてそれらの対策のため、エンジン関連の事業を売りに出し、代わりにEV関連事業を買って対応しようとしている企業が増えているようです。
自動車部品業界の動向を知ることは選考を突破するために必要です。
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自動車部品業界の求める人物像
自動車部品業界の選考を受ける際は、まず志望業界でどのような人材が求められているのかを調べましょう。
効果的なアピールをするためには、求められている素養やスキルを把握することが大切です。
ここでは、自動車部品業界で求められる素養を紹介しますので、自動車部品業界を志望している就活生は参考にしてみてください。
日本の自動車業界は世界でもトップクラスの産業です。自動車を作る上で必要な「自動車部品」はもちろん、常に最先端の技術で高品質でなくてはなりません。
そのため常に上を目指す姿勢で、その実現に向かって努力するチャレンジ精神があることが重要です。
そして小さい部品とはいえ、人の命に直結する自動車という製品に関わるため、いい加減な性格では務まりません。
厳格に品質基準を満たしていることが求められる業界のため、真面目で責任感があることも求められます。
また自動車部品業界で働くには「コミュニケーション能力」も欠かせません。
というのもどの部門も一つの部門で完結する仕事は少なく、研究・開発・購買・営業・製造現場とさまざまな人が協力して働く必要があります。もちろん社外も例外ではありません。
材料を調達するときも、完成した部品を自動車メーカーに納品するときもさまざまなコミュニケーションが発生します。
そのため人と一緒に協力して何かを作り上げる仕事がしたいと思っている方は自動車部品業界に向いているでしょう。
最後に、自動車部品メーカーは典型的な「モノづくり」ビジネスです。つまり「モノづくり」に対して情熱があることは必要不可欠です。
頭で考えたことを形にしていくこと、今世の中に存在していないものを生み出していくことに喜びを感じられる人は部品メーカーに向いています。
自動車部品業界の求める人物像について理解できたら、続いては志望動機と自己PRの書き方を学んでいきましょう。
自動車部品業界で評価される自己PRの書き方
(1) 結論
自己PRを書く際は最初に「私は○○することができます」といったように自分の長所を端的に述べます。
その際、自動車部品業界や自身が希望する企業の求める人物像に合わせ「チャレンジ精神がある」や「真面目で責任感がある」といった長所を選ぶようにしましょう。
このように最初に結論を述べ面接官に今から何の話をするのか伝えることで、聞き手側も話が入りやすくなります。
そのため、自己PRをする際は結論として、まず長所を伝えるようにしましょう。
(2)エピソード
長所を伝えたら、実際にその長所があることを証明できるエピソードを交えます。
理由としては、企業は、課題・目標やそれに対する行動を通してその人の人柄や価値観を判断しているためです。
以下で「チャレンジ精神がある」という長所を選んだ場合の例を紹介します。
(3)結果・学んだこと
エピソードの次は、自分がとった行動によってどのような結果になったか、この経験を通して何を学んだのかについても書きます。
また、結果を書く際は定量的に伝えることでよりイメージしやすい自己PRを作成することができるため「〇〇というアイディアを出し実践したところ、売上を40%上げることができた」など、数字を用いてアピールしてみましょう。
(4)入社後どう活躍できるか
企業は採用活動を通して、自社に貢献してくれる人材を求めています。つまり、面接官にこの学生は「自社で活躍する素養がある」と思わせることが大事です。
そのためには繰り返しになりますが、企業が求める人物像を把握しておく必要があります。業界研究・企業研究を通してどのような強みをアピールするのか考えておきましょう。
自動車部品業界で評価される志望動機の書き方
自動車部品業界の志望動機を書く際は「なぜ自動車部品業界なのか」「なぜその会社なのか」をしっかりと深堀りしておくことが必要です。
具体的には自分が将来何を成し遂げたいのか、例えば「自動車部品を通して、日本の基軸産業である自動車業界を支えたい」「世界に誇れる技術力を持つ企業で働き、日本だけではなくグローバルに働きたい」などといった自動車部品業界ならではの理由を述べるようにしましょう。
“なぜその会社なのか”については、他の企業ではなくその企業でなければいけない理由を伝えます。
例えば日本精工株式会社は、日本のベアリングメーカーとして業界最大手の企業で、独立系の自動車部品会社です。
ベアリングは世界3位に及ぶシェアを誇っており、それ以外にも「ボールねじ」や「リニアガイド」などの部品を生産してるなど、非常に高い技術力のある自動車部品メーカーです。
企業ごとの特徴や強みを把握した上で、志望企業を決めるようにしましょう。
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自動車部品業界ランキング
ここでは自動車部品業界のランキングを「業績」と「社内環境」に分けて紹介します。
自動車部品業界の業績ランキング
参照元:業界動向サーチ/自動車部品業界の売上高ランキング(2021-22年)は上記企業の有価証券報告書に基づき作成しています。ランキングは上記企業のデータの合計または平均を表したものです。また企業名にあるホールディングスを「HD」と省略しています。(※2022年10月時点)売上については1位がデンソー、2位がアイシン、3位が豊田自動織機、経常利益は1位が日立製作所、2位がデンソー、3位がパナソニックHDです。
売上や利益、利益率をチェックした方が良い理由は、以下の2点です。
・利益、利益率は企業が行っているビジネスの成否を示しているから
売上は企業の財務力、ビジネスの規模を表しています。つまり売上が高い企業の方が行っているビジネスの規模が大きいということです。
またA社とB社が同じ利益の場合、売上が大きい企業の方が金融機関からの融資を受けやすいとされているため、売上を見ることで企業の資金調達力もチェックすることができます。
次に利益、利益率は企業が行っているビジネスの成否を示しています。そのビジネスによる付加価値がどれくらいあるかを測る指標です。
つまり利益がほとんど出ていなかったり、赤字だとビジネスに何らかの問題があるということになります。
ただし、このランキングだけでなく、成長率も大事であるため各企業の過去についても振り返っていきましょう。
自動車部品業界の社内環境ランキング
参照元:業界動向サーチ/自動車部品業界の平均年収ランキング(2021-22年)は上記企業の有価証券報告書に基づき作成しています。ランキングは上記企業のデータの合計または平均を表したものです。また企業名にあるホールディングスを「HD」と省略しています。(※2022年10月時点)年収は1位が日立製作所、2位がデンソー、3位が住友電気工業、勤続年数は1位がパナソニックHD、2位がデンソー、3位が田中精密工業となります。
勤続年数が長いということは定着率が高いということになります。一概には言えませんが、定着率が高い会社は良い会社である可能性が高いです。
また従業員数が多い会社は多様な人と関わり合うことができるというメリットがあります。
しかし多いと自分の意見が通りにくい場合もあるというデメリットもあるため、自分にとってどの環境が合っているのか考えてみましょう。
まとめ
本記事では自動車部品業界について紹介してきましたがいかがでしたでしょうか?
自動車といえばやはり完成した車をイメージされる方が多いと思いますが、自動車に使われる部品は最大3万点と多く、自動車部品がなければ車は動きません。
自動車部品業界を含めた自動車業界は現在、EV化や自動化にむけ大きな転換期を迎えており、今後の成長が期待できる分野とも言えるでしょう。
本記事を通し、自動車部品業界の動向について理解ができた方は、自分のキャリアややりたいことにも目を向けてみましょう。
自分の言葉で話せるようにしておくことで、面接で説得力を増すことができます。
●”自動車部品業界”の仕組み
自動車を製造する上で必要になる部品を開発・製造し、自動車メーカーに供給している
●”自動車部品メーカー”の種類
「メーカー系部品会社」と「独立系部品会社」の2つに分かれている
●”自動車部品業界”の職種
職種(1):購買
職種(2):研究・技術開発
種類(3):生産(製造・生産管理)
種類(4):営業職
●”自動車部品業界”の動向
動向(1):市場規模
▷新型コロナウイルスの影響
動向(2):慢性的な人手不足
動向(3):部品の納品手法の多様化
動向(4):自動車の電子化に伴う部品需要の変化とM&A
●”自動車部品業界”の求める人物像
・チャレンジ精神がある
・常に上を目指し実現に向かって努力できる
・真面目、責任感がある
・コミュニケーション能力
●”自動車部品業界”で評価される自己PRの書き方
方法(1):強みを書く
方法(2):エピソードを具体的に書く
方法(3):結果・学んだことを書く
方法(4):入社後に強みをどう活かすのかを書く
●”自動車部品業界”で評価される志望動機の書き方
「なぜ自動車部品業界なのか」「なぜその会社なのか」を深掘りする
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