専門商社に限らず、”商社”という業界に対して「給料が高くて安定している業界」「世界を股にかけて仕事が出来る」などといった華やかなイメージを持っている方が多いと思います。
本記事では、その中でも”専門商社業界”の動向や仕組み、キャリア、志望動機、自己PRの書き方についてわかりやすく解説していきます。
また合わせて専門商社業界の売上や利益、年収、従業員数、勤続年数をランキングで紹介しています。これらのデータは、ビジネス規模や働きやすさ等を知ることができる指標ともなりうるため、ぜひ確認してください。
専門商社業界とは
商社とは、主に他企業で作られた製品およびサービスを、買いたい相手に「仲介して販売する業務」を中心とした業態の企業を指します。
最終的に商品やサービスが消費者の手に届くには、原料→製品→販売と様々な工程を通る必要があるので、商社ではこれらを総合的にサポートしていきます。
その中でも専門商社は、繊維や鉄鋼、自動車部品、日用品など、特定の分野に特化し、専門的なノウハウや独自の強みを持った事業展開をしています。
これら専門商社は「特定の商材や分野において50%以上の売上を占める商社」と定義されています。
特定の商品に特化することで、独自のノウハウやメーカー・取引先との強固な関係性を築けるのが大きな強みです。
しかし専門商社だからといって扱う商品が必ずしも1種類というわけではありません。
企業によっては複数の商品を扱っていることもあるため、メイン商材だけでなく、他にどのような商品を扱っているのかも把握しておきましょう。
専門商社の種類
「専門商社」と言われる企業は大きく3つのタイプに分類することが出来るので、それぞれの特徴を解説していきます。
総合商社系専門商社
総合商社系専門商社は、総合商社の特定分野を中核に成立した専門商社、または総合商社の事業投資により子会社化した専門商社のことを指します。
総合商社では大規模な案件が主流のため、ニッチな商材や小規模な案件など総合商社で取り扱えない取引を担当しています。
とはいえ、事業形態は総合商社とよく似ており、ビジネス規模が広くスケールも大きいことが特徴です。海外を飛び回り、グローバルな市場の最先端で働くことも出来るでしょう。
他の専門商社と比べると非常に多くの分野を取り扱っていますが、それぞれに特化した強みがあります。
・伊藤忠丸紅鉄鋼(鉄鋼)
・メタルワン(鉄鋼)
・三菱商事エネルギー(石油卸売・リテール)
メーカー系専門商社
メーカー系専門商社とは、特定のメーカーを中核としそのメーカーの製品を売ることを主な仕事としている専門商社のことを指します。
モノの「仕入れ先」が安定していることから、販売する商品の在庫管理に困ることが少ないのが利点の一つです。
またメーカー系専門商社は取り扱う商品やサービスに独自のノウハウや技術を用いており「商品力」を強みとしています。
メーカー側の担当営業マンや在庫管理部門と販売戦略を密に共有し、マーケット調査を行う際に現地に一緒に出向くこともあります。
このように メーカー系専門商社は、自社製品とも言える商品やサービスとそれらの仕入先があることから、安定した働き方が可能です。
・JFE商事(鉄鋼・鉄鋼材料・化学品など)
・花王カスタマーマーケティング(家庭用や業務用の洗剤、化粧品、トイレタリーなど)
・日産トレーディング(自動車など)
独立系専門商社
独立系専門商社とは、総合商社に属さない専門商社のことを指します。
また独立系専門商社は、仕入先や売り先を独自で見つけ、単独で事業を行っているため、独自のノウハウや技術、コネクションを持っていることが特徴です。
前述したメーカー系専門商社と異なり、仕入れ先のメーカーも顧客の要望に合ったものを見つけて、最適な提案を出来るのが大きな強みです。
商品やサービスの縛りがない分、他の専門商社に比べて仕事の自由度は高いと言えますが、決まった仕入先がないため、安定した商品の確保が難しいようです。
・兼松(電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空)
・阪和興業(鉄鋼、鉄鋼原料、建材、非鉄金属、エネルギー、化成品、食品、木材、セメント、機械)
・豊島(繊維)
専門商社の特徴と収益の柱
専門商社の特徴は、情報収集力によるマーケット分析やリスクマネジメント、豊富な資金力によるビジネスサポート、グローバルな物流網や販路の構築などにあります。
専門商社では、上記のような強みを生かして収益の柱となる「トレーディング」と「事業投資」を行っています。それぞれについて以下にて説明します。
トレーディングとは?
専門商社の場合「トレーディング」によって収益を生むことが基本のビジネスモデルです。
トレーディングの主な業務は、専門商社の持つネットワークを用いて、中間業者として他の事業会社・メーカーの商品・サービスの需要・供給をマッチングすることです。
そしてマッチングをした際に発生する仲介手数料と売値と買値の差額分がトレーディングの収益となります。
例えば自動車メーカーが製品である自動車を製造するためには、原料の鉄鋼が必要になります。
この場合、鉄鋼の売り手である「鉄鋼メーカー」と、買い手である「自動車メーカー」の間を取り持ち、貿易を成立させることが専門商社の役割です。
また単にモノを仲介するだけではなく、現在ではトレーディングに付加価値をつけることに注力しているようです。
事業投資とは?
事業投資とは、他社のさまざまな事業に、商社が保有する経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を投資・もしくは買収をし、投資先企業が利益を上げるとその分リターンを得るビジネスのことです。
投資というと、一般的には企業の株式を取得する「カネ」の部分が目立ちます。
しかし専門商社の事業投資は、人員の派遣や国内外に広がるネットワークを生かした情報提供や経営ノウハウなど、投資先企業を多面的にサポートすることができます。
専門商社での職種
専門商社ではさまざまな仕事があり、職種は1つだけではありません。
同じ商社業界に勤めている場合でも、職種が違えば仕事内容も違いますし、求められる能力も違います。
以下にて、専門商社での代表的な職種をご紹介します。
営業
製品やサービスに関する技術的知識を活かし、顧客へ営業活動を行う職種です。
製品の提案だけでなく、取引後の技術サポートから技術的な質問への対応、必要に応じた製品のカスタマイズ・設計まで携わります。
このように技術営業は、その製品の技術的な知識やスキルが求められるため、製造系部門である程度の経験を積む必要があります。
技術者としての知見やバックグラウンドがあって初めて、提案先にも効果的な営業活動が出来るようになります。
技術
技術職は、仕入れた商品に技術的な手を加えて独自の付加価値をつけたり、顧客の要望に適した商品やサービスを提供する職種です。
例えば、半導体のチップにプログラムを書き込んだり、自社で仕入れた金属製品に独自ノウハウを駆使した加工を施すなどして、技術的な問題を解決する力が求められます。
そのため、取り扱う製品についての専門的な知識や、開発に取り組んできた実績などが求められます。
営業事務・貿易事務
営業事務・貿易事務は、主に営業のサポートをおこなうのが仕事です。
営業担当者に代わって電話の応対や書類作成などの業務を受け持ち、デスクワークを中心として働きます。
商社では国内だけではなく、海外の企業と取引をすることも多く、外国語の対応力が求められることも多くあります。
貿易事務においては、税関を通す際に必要な通関の手続きなどを行うため、幅広い知識が必要な職種と言えるでしょう。
通関手続きは、海外への輸出入を行う際に必須であることから、海外事業が多い企業であれば、営業事務と貿易事務がそれぞれ分けられている場合もあります。
【2023年最新】専門商社の動向
以下にて専門商社業界の動向を3つ紹介していきます。
■ECサイトの活用
■M&A
市場規模
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、日用品以外の鉄鋼、食品、化粧品、繊維等、様々な分野で売上の減少が見られました。
2021年以降は新型コロナウイルス感染状況が収まりを見せ、エネルギーや電子機器、半導体、機械、鉄鋼分野などの専門商社業界の企業の業績が回復してきました。
しかし一方で、世界的なインフレや円安の影響を受け、原材料価格の高騰が目立っています。
そのため今後価格変動が起きることを前提に、調達価格や製品の価格などの対策が求められているでしょう。
ECサイトの活用
コロナ禍によりEC市場の拡大に拍車がかかったことで、新たにECサイトの立ち上げを検討している企業が増えているようです。
企業としてはECサイトを構築することで、多数の取り扱いアイテムを生かすことができるだけでなく、個人事業者や小口の新規取引先を増やすことができ、受注・取引を拡大させることに繋がります。
また取引先としても、いつでもどこでもサイト上で注文が可能になり利便性が向上するでしょう。
その他、コロナ禍とは関係なく、人的ミスやトラブルが起こりやすい電話やFAX注文などのアナログ業務をデジタル化することで業務効率を上げようと考え、ECサイトを構築する企業も多いようです。
M&A
専門商社の特徴は得意分野に特化した専門知識である一方、現在の日本の専門商社業界において、扱っている製品・サービスによっては国内市場だけではすでに飽和状態にあります。
その他にもECサイトの活況により、小売業者がメーカーと直接取引をする機会が多くなり、商社のトレーディングの需要が減少傾向です。
このような背景があり、事業拡大・新規顧客の獲得・ブランド力強化そして経営基盤の強化に向け、M&Aが活発に行われています。
M&Aを行い、自社の規模や領域を拡大することで、メーカーとの交渉力の強化・新製品開発の提案・積極的な海外展開などの実現性が高まるため、今後も業界再編の傾向は続くと考えられています。
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専門商社業界の求める人物像
”商社”は、幅広い商品を取り扱い、国の内外にわたり広範囲で取引市場を持つ業界です。
このような商社業界に求められる人材像としては、高いコミュニケーション能力を持ち笑顔が印象的であることが挙げられます。
というのも職種によって仕事内容は異なりますが、人と人、企業と企業を結び付けるパイプ役として働くことが求められます。つまりコミュニケーション能力が必要不可欠な仕事です。
そのため笑顔と愛嬌、さらに、優しさ・サービス精神・行動力・外見の良さなど、様々な人間的な魅力に溢れている人が求められるのです。
また特定分野に特化している専門商社の事業においては、扱っている事業内容に対して狭く深く理解する必要があり、なぜその商材を扱いたいのかを自分の言葉で説明できる人は好印象を与えることができるでしょう。
その他、商社業界においては、困難なことや思い通りに進まないことがあっても、状況を判断しながら自ら率先して動き、結果が出るまで諦めずにやり遂げることが出来る人、常識に捉われない柔軟な発想力のある人などが好まれる傾向にあります。
専門商社業界で評価される自己PRの書き方
自己PRを書く際は、以下のように「強み⇨エピソード⇨結果・学んだこと⇨入社後どう活躍できるか」の順番で書きます。
(1)結論
自己PRを書く際は最初に「私は○○することができます」といったように自分の長所を端的に述べます。
その際、警備業界や自身が希望する企業の求める人物像に合わせ「臨機応変に対応できる柔軟性」や「責任感が強い」といった長所を選ぶようにしましょう。
このように最初に結論を述べ面接官に今から何の話をするのか伝えることで、聞き手側も話が入りやすくなります。
そのため、自己PRをする際は結論として、まず長所を伝えるようにしましょう。
(2)エピソード
長所を伝えたら、実際にその長所があることを証明できるエピソードを交えます。
理由としては、企業は、課題・目標やそれに対する行動を通してその人の人柄や価値観を判断しているためです。
以下で「臨機応変に対応できる柔軟性がある」という長所を選んだ場合の例を紹介します。
(3)結果・学んだこと
エピソードの次は、自分がとった行動によってどのような結果になったか、この経験を通して何を学んだのかについても書きます。
また、結果を書く際は定量的に伝えることでよりイメージしやすい自己PRを作成することができるため「〇〇というアイディアを出し実践したところ、売上を40%上げることができた」など、数字を用いてアピールしてみましょう。
(4)入社後どう活躍できるか
企業は採用活動を通して、自社に貢献してくれる人材を求めています。つまり、面接官にこの学生は「自社で活躍する素養がある」と思わせることが大事です。
そのためには繰り返しになりますが、企業が求める人物像を把握しておく必要があります。
業界研究・企業研究を通してどのような強みをアピールするのか考えておきましょう。
専門商社業界で評価される志望動機の書き方
専門商社業界の志望動機を書く際は「どうして商社業界の中でも”専門商社”を選ぶのか」「なぜその会社なのか」をしっかりと深堀りしておくことが必要です。
「新興諸国の発展に直接的に関わる仕事をしたい」「特定の分野においてスペシャリストになりたい」など、様々な理由が考えられますが、どのような理由を伝える場合も専門商社業界でしか実現できないという点をしっかりとアピールしましょう。
また志望動機は、企業ごとの特徴や強みを把握した上で作成することを意識しましょう。
専門商社業界の志望動機の例文を見てレベル感を掴みたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
専門商社業界ランキング
ここでは専門商社業界のランキングを「業績」と「社内環境」に分けて紹介します。
専門商社業界の業績ランキング
参照元:業界動向サーチ/警備業界の売上高ランキング(2021-22年)は上記企業の有価証券報告書に基づき作成しています。ランキングは上記企業のデータの合計または平均を表したものです。(※2023年9月時点)売上については1位がメディパルHD、2位が伊藤忠丸紅鉄鋼、3位がアルフレッサHD、経常利益は1位が伊藤忠丸紅鉄鋼、2位が阪和興業、3位がメディパルHDです。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、日用品などで一部増加が見られたものの、鉄鋼、食品、化粧品、繊維、機械、電子など幅広い分野で落ち込みが見られました。
売上や利益、利益率をチェックした方が良い2つの理由は、以下の2点です。
・利益、利益率は企業が行っているビジネスの成否を示しているから
売上は企業の財務力、ビジネスの規模を表しています。つまり売上が高い企業の方が行っているビジネスの規模が大きいということです。
またA社とB社が同じ利益の場合、売上が大きい企業の方が金融機関からの融資を受けやすいとされているため、売上を見ることで企業の資金調達力もチェックすることができます。
次に利益、利益率は企業が行っているビジネスの成否を示しています。そのビジネスによる付加価値がどれくらいあるかを測る指標です。
つまり利益がほとんど出ていなかったり、赤字だとビジネスに何らかの問題があるということになります。
ただし、このランキングだけでなく、成長率も大事であるため各企業の過去についても振り返っていきましょう。
専門商社業界の社内環境ランキング
参照元:業界動向サーチ/警備業界の売上高ランキング(2021-22年)は上記企業の有価証券報告書に基づき作成しています。ランキングは上記企業のデータの合計または平均を表したものです。(※2023年9月時点)年収は1位がマクニカ・富士エレHD、2位が西本WismettacHD、3位が長瀬産業、勤続年数は1位がキャノンマーケティングジャパン、2位がプロルート丸光、3位が中部水産となります。
勤続年数が長いということは定着率が高いということになります。一概には言えませんが、定着率が高い会社は良い会社である可能性が高いです。
また従業員数が多い会社は多様な人と関わり合うことができるというメリットがあります。
しかし多いと自分の意見が通りにくい場合もあるというデメリットもあるため、自分にとってどの環境が合っているのか考えてみましょう。
まとめ
本記事では専門商社業界について紹介してきましたがいかがでしたでしょうか?
専門商社は、扱う商材がそれぞれ企業によって異なります。そのため、専門商社の選考を突破するためには業界だけでなく企業を理解することが必要不可欠です。
本記事を通し、専門商社業界の動向について理解ができた人は、あわせて企業研究もしっかりと行い選考に備えましょう。
また本記事で紹介した専門商社業界の志望動機・自己PRを書く際のポイントもぜひ参考にしてみてください。
●”専門商社業界”の動向
動向(1):市場規模
動向(2):ECサイトの活用
動向(3):M&A
●”専門商社業界”の求める人物像
・状況を判断しながら自ら率先して動ける
・常識に捉われない柔軟な発想力がある
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