●日銀による金融緩和や世界的なインフレの影響などにより、不動産価格は2020年7月からほぼ毎月上昇している
●企業のオフィス離れによる都心オフィスの空室率が高値で推移しているため、不動産業界では賃料の引き下げが続いている。
●不動産業界の求める人物像は、「コミュニケーション能力のある人」、「お客様視点に立ち考える力」
「不動産業界に興味はあるけど、どんな仕事をしているのかいまいちわからない」「不動産業界の将来性を知りたい」など、様々な人がいると思います。
しかし選考を受けるには業界研究は必須です。
そこで本記事では不動産業界の業界研究をしたいと思っている人に向けて、不動産業界の動向や仕事内容、求める人材像、志望動機・自己PRのポイントを紹介しています。
また不動産業界の売上や利益、年収、従業員数、勤続年数をランキングで紹介しているので、志望企業が決まっていない人は参考にしてみてください。
不動産業界とは?
不動産業界とは、土地や建物などに関わる業界のことです。具体的には、土地や不動産の開発・販売・賃貸・仲介・管理等の業務を行っています。
不動産業界には、商業施設やビル、マンション、リゾート施設などを開発するデベロッパー(開発業者)、注文住宅・建売住宅などを手掛けるハウスメーカー、物件の売買・賃貸を仲介する不動産仲介業者、そして不動産物件を管理している管理会社などが含まれます。
不動産業界の仕組み
不動産業界の仕事は大きく分けると「開発」「流通」「管理」の3つに分類されます。
開発の仕事はデベロッパー、流通の仕事は不動産仲介事業、不動産販売代理、管理は管理会社が担っています。
それぞれの具体的な仕事内容と代表企業を以下で紹介していきます。
開発
不動産開発では、マンションや商業施設、オフィスビル、リゾート施設などの建物を企画します。
企画は土地を仕入れることからはじめます。仕入れた土地にどのような建物が適しているのかなどを考え、土地の所有者に土地使用の交渉を行います。
交渉が成立したらその土地に建設する建物の設計を始めます。
この土地の仕入れから建物を完成させるまでの一連の仕事を行っているのがデベロッパーと言われる人たちです。
・三井不動産
・東急不動産
・野村不動産
・東京建物
・三菱地所
・森ビル
他にも内定を獲得するために知っておくべき”過去の選考情報”なども紹介していくので、企業研究に自信が持てない人や選考に不安を抱えている人は、確認してみてください。
流通
不動産流通は不動産のオーナーと不動産を購入したいお客様を結ぶ仕事です。
流通の仕事はさらに細かく分けることができます。以下でそれぞれについて紹介します。
不動産仲介事業
不動産仲介事業は、一戸建て住宅やマンション、アパート、土地などの賃貸や売買を仲介する仕事をしています。
不動産のオーナーが自ら販売するのは難易度が高いため、仲介業者がその役割を担い、オーナーとお客様のマッチングをしています。
また仲介だけでなく、不動産オーナーの情報を持っていることから土地を買いたいデベロッパーへ情報提供するのも仲介事業の仕事です。
不動産販売代理
不動産販売代理は不動産のオーナーから不動産の販売を委託され、お客様に買ってもらえるように販売促進を行います。
具体的には住宅展示のイベントの開催や物件の案内などをしています。
・三井不動産リアリティ
・住友不動産販売
・東急リバブル
・アパマンショップ
管理
管理の仕事は不動産オーナーが持っている物件の管理です。
管理と言っても業務は様々あり、入居者の対応やトラブルが起こった際の対応、ビルの清掃、テナントに入店するお店を募るなど、他にもたくさんの役割を担っています。
仕事の幅が広いことから管理経験がなくノウハウを持っていない不動産オーナーだけで管理するのは難しいため、不動産管理会社が代わりに管理業務を行っているのです。
また、不動産会社が保有している建物だけでなく、街の公共施設の管理や運営まで担当する会社もあります。
・三井不動産レジデンシャルサービス
・東急コミュニティー
・株式会社レジデンシャルサービス
不動産業界の動向
ここでは不動産業界の動向を3つ紹介していきます。
それぞれ以下のトピックスについて紹介しているので、過去から未来までの不動産業界の動向を把握しておきましょう。
・新築マンションの供給戸数の減少
・マンションの建築費用が高騰
・投資用物件としての需要増
■省エネ型住宅への関心
・ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)
・スマートハウス
■都心オフィスの空室率が高値で推移
まず動向を学ぶ前に不動産業界について数字で見てみましょう
参照元:業界動向サーチ/2021-22年の業界レポート ※2023年7月10日作成時点✔ 不動産価格の上昇
以下のグラフは2020年1月から2023年4月までの不動産の取引件数と価格指数※の推移を示したものです。
※価格指数とは、財・サービスの価格を2時点(基準時と比較時)の比率で示したものを意味します。今回の場合、2010年1月~12 月までの平均値を 100 として基準化したものになります。
2020年から2023年4月にかけて、取引件数は月によりばらつきがあります。一方、不動産価格は2020年7月からほぼ毎月上昇していることが分かります。
不動産価格が上昇している主な理由としては、「日銀による金融緩和や世界的なインフレの影響」や「円安による外国人投資家からの需要増加」が挙げられます。
特に上昇率が高いのは、「マンション(区分所有)」の価格です。
マンションの価格が上昇し続けている理由は大きく分けて以下の2つになります。
①新築マンションの供給戸数の減少
近年、新築マンションの供給戸数が減少しています。需要量に対して供給量が少ない状況が続いており、市場価格が上がっていると考えられます。
②マンションの建築費用が高騰
建築資材や人手不足による人件費の高騰により、建築にかかる費用は年々増加していることも大きな原因です。
③投資用物件としての需要増
円安により海外の方は日本のマンションをより安く購入することができる状況が続いています。特に、主要駅から徒歩圏内といったような立地の良いマンションは、価値が下がりにくく、安定した需要が期待できます。そのため、投資用にマンションを購入する海外投資家が増加しており、マンションの価格上昇を加速させているといえるでしょう。
2023年4月時点でもマンション価格の上昇は続いておりますが、世界情勢や国内の景気などの外的要因を受けて、低下に転じる可能性も考えられます。
参照元:国土交通省/ 建設産業・不動産業「不動産価格指数」
✔ 省エネ型住宅への関心
2015年に採択されたSDGs(※)の11番目には「住み続けられるまちづくりを:都市と人間の居住地を包括的、安全、強靭かつ持続可能にする」という目標が掲げられました。
それに伴い、一般財団法人日本建築センターは、建築産業がSDGにどのように関係していて、どのように取り組むべきかを示した「建築産業にとってのSDGs(持続可能な開発目標)‐導入のためのガイドライン-」などを発刊するなど、省エネ型住宅への取り組みが促進されています。
このような背景を踏まえて、人びとの「環境への配慮」や「住まいにおける省エネ」への関心が高まってきています。以下では注目度の高い省エネ型住宅を2つ紹介します。
(※)SDGsとは「Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)」の略称。2030年までに達成すべき17の目標が掲げられており、2015年の国連サミットにおいて採択されました。
参照元:一般財団法人日本建築センター/「建設産業にとってのSDGs(持続可能な開発目標) -導入のためのガイドライン-」
ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)
「Net Zero Energy House (ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略で、「エネルギー収支をゼロ以下にする家」という意味です。
家庭で使用するエネルギーと、太陽光発電などで創るエネルギー(※省エネ・創エネ)でバランスを取り、1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする家ということになります。ZEHは快適な心地よい暮らしを実現しつつ、高い省エネ・省CO2効果を発揮する対策の切り札として注目を集めています。
ZEHはエネルギーの地産地消を可能にするため、CO₂の排出量を削減でき、環境へ配慮した生活を送ることができるようになります。
他にも、断熱性能が高いことから「夏は涼しく冬は暖かい」という快適性、停電時でも太陽光発電などを備えておくことで電力を確保できるという災害対策、省エネ・創エネによる光熱費を抑えることができる経済性と、ZEHには様々なメリットがあります。
政府は地球温暖化対策に繋げるため、ZEHの補助金制度を導入し普及の促進を行っています。
参照元:LIXILのZEH
スマートハウス
スマートハウスとはITを使い家庭のエネルギー消費をコントロールする省エネ住宅のことを指します。中でも注目を集めているのはHEMS(Home Energy Management System)です。
HEMSとは「家庭内で電気を使用している機器について、一定期間の使用量や稼働状況を把握し、電力使用の最適化を図る」管理システムのことです。例えば、電気やガスなどの使用料をモニター画面などで「見える化」することや、使用量に応じて家電機器を「自動制御」するなどがあります。
このようなITシステムを用いたスマートハウスは、家庭で必要な電力と無駄な電力の把握を可能にする他に、CO₂の排出量削減という点で高く評価されています。政府はスマートハウスについても補助金・助成金制度を設けていましたが、2013年に打ち切りました。
その代わり、国としてはHEMS以外の補助金制度を充実させ、また、自治体ごとのHEMSの補助金制度を実施することで、国は2030年までに国内普及率100%を目指しています。
参照元:
・パナソニック/スマートHEMS : HEMS(ヘムス)とは?
・SpaceCore/ReTech メディア
✔ 都心オフィスの空室率が高値で推移
近年、一部の都心におけるオフィスの空室率が上昇傾向にあります。
オフィスビル仲介大手の三鬼商事の調査によると、6月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィスの平均空室率は6.48%、前月比0.32ポイント増加となりました。
空室率の上昇は2か月連続となり、供給過剰の目安とされる5%については29ヶ月連続で上回ったことになります。
この背景には、企業のオフィス離れがあります。感染拡大防止のため企業が従業員の出社を減らし、オフィス面積を縮小する動きがみられました。
一般的に、オフィス空室率は5%を超えると賃料が下落すると言われており、実際に都心5区の1坪当たりの平均賃料は2020年7月をピークに減少傾向です。
2023年秋には「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」、「渋谷サクラステージ」と大規模な供給が続くため、オフィス空室率は今後も高い水準が続くと予想されます。
不動産業界の志望動機の書き方
不動産業界の志望動機を書く際は「なぜ不動産業界なのか」「なぜその業種なのか」「なぜその企業なのか」をしっかりと深堀りしておくことが必要です。
まず、業界については「建物だけでなく人々の暮らしに関わる仕事であるため、建物や土地を通じて豊かな暮らしを提供したい」などといった不動産業界ならではの理由を入れましょう。
次に業種については、例えば住宅であれば、住宅の購入は人生で1番大きな買い物と言われているためミスは絶対に許されません。
そのため設計の前段階で顧客のニーズをしっかりと汲み取る必要があります。
人の人生を預かる仕事でもあると言えるため、業種ごとの社会的価値を必ず把握しましょう。
最後に企業については、各企業によって営業する物件が全く異なる場合があるため、その企業は何に強みを持っているのかなど、企業の特徴を調べ上げましょう。
それが終わったら競合と比較してください。そうすれば自ずと各社ごとの特徴が明確になります。
不動産業界の志望動機の例文を見てレベル感を掴みたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
業界の特徴や業務内容を把握した上で、志望動機の例文を参考に書き方のコツを掴みましょう。
不動産業界でうける自己PRの書き方
自己PRを書く際は「強み⇨エピソード⇨結果・学んだこと⇨入社後どう活躍できるか」の順番で書きます。
それぞれどのように書けばいいのかについては以下で詳しく紹介していきます。
自己PRの基本的な書き方
(1)結論
自己PRを書く際は最初に「私は○○することができます」といったように自分の長所を端的に述べます。
最初に結論を述べ面接官に今から何の話をするのか伝えることで、聞き手側も話が入りやすくなります。
そのため、自己PRをする際は結論として、まず長所を伝えるようにしましょう。
(2)エピソード
長所を伝えたら、実際にその長所があることを証明できるエピソードを交えます。
ここではできるだけ具体的なエピソードを伝えるために、その出来事の中で生じた課題・目標や、その課題・目標に対してどのような行動をとったのかについてまで書くようにしましょう。
また企業は、課題・目標やそれ対する行動を通してその人の人柄や価値観を判断しているため、なぜその課題・目標に取り組もうと思ったのか、なぜそのような行動をとったのかについて、しっかりと見つめ直しておいてください。
(3)結果・学んだこと
エピソードの次は、自分がとった行動によってどのような結果になったかについても書きましょう。
結果を書く際は、定量的に表すことを意識してください。
例えば「〇〇というアイディアを出し実践したところ、売上を40%上げることができた」など数字を用いてアピールした方が相手に伝わりやすいです。
また、この経験を通して何を学んだのかについても書きます。
面接官はその人の学びからも価値観や人柄を判断しています。
価値観や人柄はその学生を採用するかどうかの大きなポイントとなるため、自分がどういった人なのか、いかにその企業に必要な人材であるのかをアピールするようにしましょう。
(4)入社後どう活躍できるか
企業は採用活動を通して、自社に貢献してくれる人材を求めています。
つまり、面接官にこの学生は「自社で活躍する素養がある」と思わせるのが大事です。
そこで自己PRをする際は、最後に今伝えてきた長所をどのように志望企業の業務に活かしていくかまで伝えるようにしてください。
そのためには企業が求めている人材像を把握する必要があります。
業界研究・企業研究を通してどのような強みをアピールするのか考えておきましょう。
より詳しい自己PRの書き方について知りたいという方は以下の記事を参考にしてください。
まだ自己PRを考えてない人も、すでに考えている人も自分の自己PRがこれで大丈夫か確認してみてください。
不動産業界の求める人物像
不動産業界は顧客だけでなく、建物のオーナーや管理会社など、常に誰かと関わりながら仕事を行います。
個人に対して仲介を行ったり、法人や団体に交渉したりするなど、関わる相手も様々となっているため、コミュニケーション能力や異なる立場や価値観の人と協力することができるという素養が必要です。
また、職種にもよりますが、例えばデベロッパーの仕事であれば土地の仕入れから設計、建設など建物を完成させるまでの一連の仕事を担っています。
そのためどのような建物であればお客様が快適に過ごせるかなど、お客様視点に立ち考える力も求められています。
ここまでで不動産業界の仕組みや動向、志望動機・自己PRの書き方について紹介してきました。
最後に不動産業界の売上げランキングを紹介します。まだ志望企業が決まらないという人は参考にしてみてください。
不動産業界ランキング
ここでは不動産業界のランキングを紹介します。まずは「売上」「経常利益」「利益率」のランキングを紹介していきます。
また「年収」「従業員数」「勤続年数」のランキングも以下で紹介しています。
不動産業界の業績ランキング
参照元:業界動向サーチ/不動産業界の売上高ランキング(2021-22年)は上記企業の有価証券報告書に基づき作成しています。ランキングは上記企業のデータの合計または平均を表したものです。また企業名にあるホールディングスを「HD」と省略しています。(※2023年7月時点)売上については1位が三井不動産、2位が三菱地所、3位が大東建託、経常利益は1位がオリックス、2位が三菱地所、3位が住友不動産です。
売上や利益、利益率をチェックした方が良い理由は、以下の2点です。
✓利益、利益率は企業が行っているビジネスの成否を示しているから
売上は企業の財務力、ビジネスの規模を表しています。つまり売上が高い企業の方が行っているビジネスの規模が大きいということです。
またA社とB社が同じ利益の場合、売上が大きい企業の方が金融機関からの融資を受けやすいとされているため、売上を見ることで企業の資金調達力もチェックすることができます。
次に利益、利益率は企業が行っているビジネスの成否を示しています。そのビジネスによる付加価値がどれくらいあるかを測る指標です。
つまり利益がほとんど出ていなかったり、赤字だとビジネスに何らかの問題があるということになります。
ただし、このランキングだけでなく、成長率も大事であるため各企業の過去についても振り返っていきましょう。
不動産業界の社内環境ランキング
参照元:業界動向サーチ/不動産業界の売上高ランキング(2021-22年)は上記企業の有価証券報告書に基づき作成しています。ランキングは上記企業のデータの合計または平均を表したものです。また企業名にあるホールディングスを「HD」と省略しています。(※2023年7月時点)年収は1位がヒューリック、2位が日本商業開発、3位が三井不動産、勤続年数は1位が阪急阪神HD、2位がナイス、3位が三重交通HDとなります。
勤続年数が長いということは定着率が高いということになります。一概には言えませんが、定着率が高い会社は良い会社である可能性が高いです。
また従業員数が多い会社は多様な人と関わり合うことができるというメリットがあります。
しかし多いと自分の意見が通りにくい場合もあるというデメリットもあるため、自分にとってどの環境が合っているのか考えてみましょう。
年収以外にも、採用実績(職種別)・配属情報・平均勤続年数・平均残業時間など企業の表向きの情報ではなく、企業の″リアル″な情報も紹介していきます。
まとめ
本記事では不動産業界について紹介してきました。不動産業界が今まで抱えていた課題や将来の動向についても理解できたと思います。
選考を突破するためにはその業界を理解することが必要不可欠です。そのため業界研究をしっかりと行い選考に備えましょう。
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