スポーツ用品は明治40年以前は輸入品に頼っていましたが、美津濃商店(現在のミズノ)が先駆けとなりスポーツ用品の製造・販売をおこなう企業が増加しました。
当時のスポーツ用品は輸入品に比べ質があまり良くなかったのですが、商品改良を繰り返し今では世界に展開しているスポーツ用品メーカーも多くあります。
また、近年コロナウイルスの影響により一時は売上が減少したものの、健康意識の高まりやEC事業の拡大により今は回復傾向にあります。
景気に大きな影響を与えられながらも成長を続けてきたスポーツ用品業界は、今後も需要が高まることが予想されるでしょう。
本記事では、動向や仕組みについて紹介するだけではなく、「スポーツ用品業界の将来性」や「各企業から求められる人材」を知りたいという人に向けて、スポーツ用品業界の仕組みや動向、自己PRの書き方についてわかりやすく解説していきます。
また、スポーツ用品業界の売上や利益、年収、従業員数、勤続年数をランキングで紹介しています。ビジネス規模や働きやすさなどがわかるので、確認してみましょう。
スポーツ用品業界の仕組み
スポーツ用品業界は、野球のバットやグローブ、テニスのラケット、陸上のスパイクといった[スポーツ用品]に携わる業界のことを指します。
そのようなスポーツ用品業界は、スポーツメーカーから消費者へ直接商品を販売したり、スポーツメーカーから卸売業や小売業を介して消費者に商品を販売したりするビジネスモデルが一般的です。
スポーツ用品業界の仕事内容
スポーツ用品業界の仕事は大きく「スポーツメーカー」「卸売業」「小売業」に分けられます。
具体的にどのような仕事があるのか確認しましょう。
スポーツメーカー
スポーツ用品を作るメーカーのことです。具体的には、ナイキやミズノなどが挙げられます。スポーツメーカーの中には様々な仕事があり、その一例を紹介します。
・営業:全国のスポーツ用品店と商談する
・マーケティング:消費者のニーズを調べたり戦略や施策を考えたりする
・広報:商品情報などを発信する
・生産管理:在庫管理や品質管理をする
・物流:商品の輸送をする
・DTC(Direct to Consumer):直接お客様に商品を販売する
卸売業
卸売業は、スポーツメーカーと小売業の間に立ち、商品を仲介する役割を担っています。具体的には、ZETTやモルテンといった会社などです。
商品を製造しても卸売業者がいなければ、スポーツメーカーは自店舗でしか販売することができなくなってしまいます。卸売業があることで、全国各地にスポーツ用品を提供することができるのです。
小売業
スポーツ用品を直接お客様に提供する業務を担っているのが小売業です。具体的には、ゼビオやヒマラヤなどが挙げられます。
売り場のディスプレイを変更したり、実際にお客様の足形を測定してお客様の足の形にあったシューズを提案したりします。お客様と会話しながら商品を提案していく形が一般的です。
スポーツ用品業界の動向
ここではスポーツ用品業界の動向について紹介していきます。
まず動向を学ぶ前にスポーツ用品業界の全体の状況を見てみましょう。
近年、新型コロナウイルスの影響により健康意識が高まりました。その影響で、スポーツ需要も増加したため、業界全体の利益率が右肩上がりになっていると考えられています。
市場規模
まずは、市場の状況に関する動向についてみていきましょう。
健康志向が高まる
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、全世界で健康について見直す機会が増え、健康的な生活を送る上で大切な運動を始める人が増えました。
それにより、スポーツ用品を購入する人が増えたことで、業界全体で売上が回復・上昇に繋がったと考えられます。さらに分野別で見ると、ランニングシューズやウェアの売上が増加しています。
これは健康意識の高まりにより、スポーツを始めようと思った人たちが比較的始めやすいランニングを選んだことが要因でしょう。
スポーツへの関心が高まる
近年、野球選手の大谷選手やサッカー選手の三苫選手など、国内だけでなく海外で活躍しているアスリートが増えてきています。
その他にもオリンピックやワールドカップなど、国際大会で好成績を残す活躍により人々のスポーツへの関心が高まりました。また世界的なアスリートの活躍により競技人口が増え、スポーツ用品を購入する人が増加しました。
それ以外にも、アスリートの応援のためにファンが選手とお揃いのユニフォームを購入したことも売上向上に寄与していると考えられます。
新たな取り組み
ここでは、スポーツ用品業界が市場規模・売上拡大のために取り組んでいることについてお伝えします。
スポーツ用品のIT化
新しい施策としてスポーツ用品のIT化が挙げられます。
アシックスでは、2020年にシューズ自体にセンサーを内蔵することで、履いて走るだけで足の動きをデータ化することを可能とした「RUNWALKOROHE」というスマートシューズを開発・販売しました。
また、ミズノでは「ブラストモーション」というバッティングを解析するシステムを開発しました。これは、野球選手の大谷選手も使っていて、専用アタッチメントをバットにはめ込んだ状態でバッティングをすることで、バットスイングを計測できる機器です。
このようにスポーツ用品自体にIT要素を入れたり、スポーツ用品に取り付けてデータを測定したりするなど、IT×スポーツの分野が成長しています。
IT化により、今まで「勘」や「経験」など個人の主観でしか測ることしかできなかったものが可視化できるようになりました。
まだ始まったばかりの分野ですが、確実に選手の技術向上に繋がるため、今後の成長が期待されます。
量販店と専門店の共同出店
2022年、大手スポーツ量販店とサッカー&フットサル専門店が新規開業のショッピングモール内に共同出店しました。
スポーツ量販店としては中級者・上級者層の来店者増加、専門店としては認知度の向上とファンの獲得という課題解決が期待されます。
この相乗効果が見込めれば、スポーツ小売業での新たな店舗運営方法が広まり、スポーツ用品の売上も増加するのでしょう。
参照元:矢野経済研究所/スポーツ用品市場に関する調査を実施(2023年)
海外市場の開拓
現在、日本国内ではスポーツ用品の売上が増加傾向にありますが、さらなる売上拡大のために海外市場の開拓が必要です。
なぜなら日本は、少子高齢化や人口減少が進んでいるため国内市場に頼りすぎると今後の売り上げが減少していく可能性があるからです。
また、国内の製品は海外の製品に比べ質は良いものの、ブランド認知力に劣っているため、海外市場での競争力に課題があります。この現状を打開するためブランド認知力やマーケティング力の強化が必要不可欠です。
この2つを強化し、海外市場での売上拡大を図ろうとスポーツ業界各社は奮闘しています。
スポーツ用品業界の求める人物像
以下では、スポーツ用品業界の大手企業3社の採用ホームページから、求める人物像を引用して紹介します。
■[アシックス商事]の求める人物像
・新たな価値を生み出すことに挑戦できる人
・絶えず自己研鑽を続けている人
・強い責任感と高い倫理観を持つ人
引用元:アシックス商事/よくあるご質問
■[ミズノ]の求める人物像
・明るい人
・柔軟な思考や発想ができ、バイタリティーあふれる人
引用元:ミズノ株式会社/求める人物像
■[グローブライド]の求める人物像
自ら行動する意志を持った人
引用元:グローブライド/採用サイト
スポーツ用品業界の仕事内容は大きく分けて開発/生産系と営業系があるため、どこに配属されるかによって求められる能力は異なります。
まず、生産/開発系の場合には、開発に必要な専門知識はもちろん、最新のトレンドやお客様の声をキャッチアップしていく情報収集力、それらを通して新たな商品を生み出す柔軟性や発想力、企画力も求められます。
他方、営業系である場合は大前提のコミュニケーション能力はもちろん、豊富な商品知識や提案力や、困難なことにも前向きに立ち向かうチャレンジ精神も必要です。
海外市場への開拓が課題となっている今、英語力がある人も求められていると言えるでしょう。
上記より、スポーツ業界では、以下の素養を満たす人が求められています。
- チャレンジ精神のある人
- 向上心のある人
- 責任感のある人
- 明るい人
- 柔軟な思考や発想ができる人
- 率先して行動できる人
スポーツ用品業界で評価される自己PRの書き方
自己PRを書く際は、基本的に「強み⇨エピソード⇨結果・学んだこと⇨入社後どう活躍できるか」の順番で書きます。
(1)結論
自己PRを書く際は最初に「私は○○することができます」といったように自分の長所を端的に述べます。
その際、スポーツ用品業界や自身が希望する企業の求める人物像に合わせ「チャレンジ精神がある」「柔軟性がある」といった長所を選ぶようにしましょう。
このように最初に結論を述べ面接官に今から何の話をするのか伝えることで、聞き手側も話が入りやすくなります。
(2)エピソード
長所を伝えたら、実際にその長所があることを証明できるエピソードを交えます。
理由としては、企業は、課題・目標やそれに対する行動を通してその人の人柄や価値観を判断しているためです。
以下で「チャレンジ精神がある」という長所を選んだ場合の例を紹介します。
(3)結果・学んだこと
エピソードの次は、自分がとった行動によってどのような結果になったか、この経験を通して何を学んだのかについても書きます。
また、結果を書く際は定量的に伝えることでよりイメージしやすい自己PRを作成することができるため「〇〇というアイディアを出し実践したところ、売上を40%上げることができた」など、数字を用いてアピールしてみましょう。
(4)入社後どう活躍できるか
企業は採用活動を通して、自社に貢献してくれる人材を求めています。つまり、面接官にこの学生は「自社で活躍する素養がある」と思わせることが大事です。
そのためには繰り返しになりますが、企業が求める人物像を把握しておく必要があります。業界研究・企業研究を通してどのような強みをアピールするのか考えておきましょう。
スポーツ用品業界で評価される志望動機の書き方
スポーツ用品業界の志望動機を書く際は「なぜスポーツ用品業界なのか」「なぜその会社なのか」をしっかりと深堀りしておくことが必要です。スポーツが好きだからという理由だけではいけません。
「スポーツの楽しさを伝えたい」「その人がおこなっている競技や特性に合った商品を提案したい」「プレーヤーを支えたい」など様々な理由が考えられますが、どのような理由でもスポーツ用品業界でしか実現できないという点をしっかりとアピールしましょう。
例えばミズノは、創業から117年を迎える国内トップクラスの企業です。
1906年創業以来、「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という経営理念のもと、スポーツの価値を活用した商品サービスを開発しています。
そして、[グッドデザイン賞]などを多数受賞しています。
志望動機は、上記のような企業ごとの特徴や強みを把握した上で作成することを意識しましょう。
スポーツメーカーの志望動機の例文を見てレベル感を掴みたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
また「志望企業に評価される自己PR・志望動機の書き方が知りたい」「選考通過率を上げたい」という方は、就職エージェントneoを利用してみてください。
スポーツ用品業界ランキング
ここではスポーツ用品業界のランキングを「業績」と「社内環境」に分けて紹介します。
スポーツ用品業界の業績ランキング
売上については1位がアシックス、2位がミズノ、3位がグローブライド、経常利益は1位がシマノ、2位がアシックス、3位がゴールドウインです。
売上や利益、利益率をチェックした方が良い理由は、以下の2点です。
・利益、利益率は企業がおこなっているビジネスの成否を示しているから
売上は企業の財務力、ビジネスの規模を表しています。つまり売上が高い企業の方がおこなっているビジネスの規模が大きいということです。
またA社とB社が同じ利益の場合、売上が大きい企業の方が金融機関からの融資を受けやすいとされているため、売上を見ることで企業の資金調達力もチェックすることができます。
次に利益、利益率は企業がおこなっているビジネスの成否を示しています。そのビジネスによる付加価値がどれくらいあるかを測る指標です。つまり利益がほとんど出ていなかったり、赤字だとビジネスに何らかの問題があるということになります。
ただし、このランキングだけでなく、成長率も大事であるため各企業の過去についても振り返っていきましょう。
スポーツ用品業界の社内環境ランキング
平均年収は1位シマノ、2位がアシックス、3位が遠藤製作所、そして勤続年数は1位ミズノ、2位がゴールドウイン、3位がゼットでした。
勤続年数が長いということは定着率が高いということになります。一概には言えませんが、定着率が高い会社は良い会社である可能性が高いです。
また、従業員数が多い会社は多様な人と関わり合うことができるというメリットがあります。
しかし多いと自分の意見が通りにくい場合もあるというデメリットもあるため、自分にとってどの環境が合っているのか考えてみましょう。
まとめ
スポーツ用品業界は、売上が競技人口の増減や社会情勢に比較的左右されやすい特徴があります。
それでもスポーツ用品業界に就職したい、スポーツに関わる仕事がしたいと思っている就活生は、スポーツ用品業界で自分に何ができるのか、どんなキャリアを積んでいきたいかなど、もう1歩踏み込んで考えてみると良いでしょう。
また、スポーツ用品業界は他の業界に比べて新卒採用の募集が少ないため、各企業の採用情報を確認した上で数少ない採用枠を勝ち取れるよう、業界研究だけでなく企業研究や自己分析なども積極的におこなうと良いでしょう。
また、「業界研究って他に何をしたらいいの?」と思っている人は下記の参考記事を見ておくことをオススメします。
就職エージェントneoを活用して就活をしよう!
- 「スポーツ用品業界に就職するにはどんな対策が必要?」
- 「スポーツ用品業界の選考で評価される志望動機を書くにはどうしたらいい…?」
- 「自分に合った業界・企業がわからない…」
このように就活に関する悩みは人それぞれでしょう。
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